最新号トピックス

2008.12.29

2008年をふり返る 不登校をめぐる動き

2008年はどんな年だったのだろうか。サブプライムローンに端を発したアメリカの金融危機は、ゼネラルモータース、フォード、クライスラーのビッグスリーを破綻寸前にまで追い込み、今や世界を席巻している。9月ころから日本への影響も深刻となり100年に1度といわれるほどの大不況を迎え、嵐のような派遣切り・雇い止め、就職内定者のとり消し、トヨタなどの大企業によるリストラなど、日々暗いニュースが続いている。契約期間中に突然解雇通告など、なりふりかまわぬひどさである。日本は、法治国家であり、契約を大事にする国ではなかったのか。契約をした人間として責任をもつ社会ではなかったか。 そういえば、2008年ほど偽の食品、偽の産地、偽の表示、偽の「安全」が発覚した年はない。他者に対して約束したことに責任をもたなくなったのだろうか。わからなければいい、自己利益が守られさえすればいい、という人々が増えているのだろうか。 一年中ガタガタした年金問題も解決できていない。血税の行方を決め、この国の舵取りをする権限をもっている政治家たちは、何をしているのだろう、と人々がたびたび思った年だったと感じられる。不登校をめぐる動きを中心にこの一年をふり返る。

◎ 不登校をめぐる動き

8月、毎年発表される文科省による学校基本調査速報が出た。小・中学校の不登校者数は、2年連続で増加して12万9000人となった。「2年連続」というと少ないようだが、この数年の傾向を見る必要がある。まず02年から4年連続で微減していたのだが、これはこの年の協力者会議で「学校復帰に何らかの働きかけをすべきである」との国の方針が出て、熱心な不登校減少政策が各地でとられた影響が大きかった。 その後06年にいじめ自殺が相次ぎ、登校圧力がややゆるんだのか、学校ストレスの増加か、ここ2年増加したという流れである。中学生の不登校率は、調査開始以来、41年間で過去最高となった。 08年に不登校関係のニュースで話題をさらったのは、新潟県で、一度に不登校の子どものいる13家庭に出席督促書が出されたことだ。なぜ一度に13家庭が対象となったのか。この13家庭の子どもたちは、同じ幼児教室に通っていた子で、その幼児教室では、のびのびと育っていた。しかし、その子らが小学校に入学すると身体的・精神的拒否反応があっため、親たちは自分たちでフリースクールをつくっていこうとしたのだ。それに教育委員会が「圧力」ともとれる強い態度をみせた問題だった。しかし、督促書の発行は法律的に適切と言えず、現在では督促書はすべて返上された。親たちがつくったフリースクールには、現在、約30人の子たちが通ってきている。 また、もう一つ注目されたのは、5月に誕生した「フリースクール環境整備推進議員連盟」であった。フリースクールに通う小・中学生に適用されている通学定期券を「高校年齢の子にもできるようにしてほしい」という運動が、議員たちの新しい動きにつながった。超党派で30名以上が参加。3回にわたり真摯な会合がもたれ、改善が一歩進むかに見えたが、期待された秋以降、「政治空白」の中でそのままだ。 また9月、丹波ナチュラルスクール事件が「フリースクール傷害事件」と報道された。丹波ナチュラルスクールはフリースクールの対極にあるタイプの更生施設だ。それにも関わらず、「不登校の子をあずかるところはフリースクールだ」というような思いこみで報道されたのだろう。フリースクールの定義の混乱が「ここまできたか」と思わざるを得ない。80年代、戸塚ヨットスクール事件が起きたとき、誰も戸塚ヨットスクールをフリースクールと呼ぶ人はいなかった。と同時に、不登校・ひきこもりなどの子どもたちがいまだ人権無視の悲惨な餌じきになる状況があることを示した事件であった。 不登校がからむ事件としては、高知県で14歳女子中学生の硫化水素自殺(4月)、京都府で行方不明になっていた女子高生の遺体発見(5月)、奈良県で、中学から不登校だった17歳の若者が父親を斧で殺害(6月)、などの事件が起こっており、子どもの悩みの深さを感じさせる。 行政の動きとして、国がスクールソーシャルワーカーの全国配置に乗り出した年であったが、真に子どもの側に立った人材配置が間に合っていない状況も見え、これからである。京都府や福岡県でフリースクールに公費支援を始めたが、学校復帰前提がからんでいるかぎり、子どもの最善の利益からは遠のくと言えるだろう。 東京都は09年度から「不登校支援員」ならぬ「登校支援員」制度を出発させる。これも登校圧力を増すだろう。不登校対策は50年以上変わっていない。「学校復帰前提」を変えないことには、子どもの苦しみはなくならないだろう、と感じた1年だった。 ◎「いじめ、ネットいじめ」「自殺/他害事件」「家族をめぐる事件」は本紙掲載

◎活気づいた市民活動

こんな1年ではあったが、何といってもオバマ大統領が選出されたことは、社会は変えられるという勇気を世界中の人に与えた年であった。日本でも格差社会を変えようと多くの人が立ち上がって動いている。昨年NPO法施行10年ということもあり、今年10周年を迎えるNPO団体も多い。自分たちが積極的に社会づくりにかかわり、社会を変えていこうとする人たちは増えている。 チャイルドラインは、ついに、全国のどこからでも無料で安心してかけられる子ども専用の電話の設置を実現した。11月より試行期間に入って、2009年の5月5日より本格実施となる。 不登校の世界でも、主として親の会のつながる「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク」がNPO法人になり、新体制で活動を始めた。また、09年の夏には20周年イベントを行なう。フリースクール全国ネットワークも、佐賀の全国子ども交流合宿や各地のフリースクールフェスティバルで多くの子どもたち・参加者を集めた。1月にはJDEC(日本フリースクール大会)も予定され、政策提言が採択される。本紙も昨年、10周年の集いを行ない、無事11年目の活動を展開している。 親も子も市民も、孤立せず、つながりあい、必要なものはつくり出し、社会は変えられるとの信念のもと、2009年に向きあいたい。そういえば、09年は、子どもの権利条約採択20年である。(本紙理事・奥地圭子)