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2010.11.01

書評 ひきこもりを理解する原理原則

ひきこもり、親子問題、少年事件などに鋭い指摘を投げかける芹沢俊介さんの本が2冊、発刊された。 まずは芹沢さんの単著『「存在論的ひきこもり」論』(雲母書房)。本書は、98年斎藤環が発表した「社会的ひきこもり論」を論破し、その「当事者不在」さ、不完全さを指摘。そして「存在論的ひきこもり」論がいかにして構築できるかを説いた。本書のなかで触れられる「子どもは誰かといっしょのときにひとりになれる」「『する自分』は『ある自分』のうえに成り立つ」「イノセンス」など、著者を代表する理論は、いま、ひきこもりを考えるうえではずせない原理原則だ。 一方、『生きられる孤独』(東京シューレ出版)は、不登校経験者の父であり、家庭裁判所調査官を永年勤めた須永和宏さんと芹沢俊介さんの往復書簡だ。当然、話は佐世保小6同級生殺害事件(04年)、板橋両親殺害事件(05年)といった少年事件への見方に対する考察に含蓄が出る。そして往復書簡中に起きた秋葉原無差別殺人事件。これにも二人は事件当時の見解を示しており興味深い。テーマは事件以外にも、不登校、発達障害、自閉症、子どもの貧困などに移ろうが、盛り上がりのピークは「孤独」をテーマにしていたときであった。やりとりのなかで「生きられる孤独」という言葉が飛び出す。この「生きられる孤独」がなんであるかは、本書を読んでもらいたい。ただ、それは最首悟さんが説く「独り性の重要性」や、ひきこもり当事者が語った「ひきこもることで私は人間になれた」という指摘に通じるものがある、と感じる。 もしも、この「生きられる孤独」について社会のなかで多いに議論されたなら、私は、ひきこもりが「誰にでも必要なもの」として認められるような、そんな気がするのだ。 (東京編集局・石井志昂) ◎『存在論的ひきこもり論』 存在論的ひきこもり論 ◎『生きられる孤独』 生きられる孤独