最新号トピックス

2012.10.01

保護者の同意なく、医療保護入院が可能に?

 厚生労働省に設置された「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」(座長/町野朔・上智大教授)は6月28日、保護者の同意なく精神科病院への入院が可能になるなど、精神保健福祉法が定める入退院制度の見直し案をまとめた。「精神科病院の入院患者を早期に退院させ、地域で暮らしていけるようにする」のが検討チームのねらい。今後、厚労省では同法の改正案をとりまとめ、来年の通常国会への提出を目指すという。  精神保健福祉法で定める入院は3つ。「任意入院」(本人の同意を入院要件とするもの)、「医療保護入院」(本人の同意が得られない場合、保護者の同意を入院要件とするもの)、「措置入院」(自傷他害のある人を対象に都道府県が行なうもの)だ。  現在、1年間に精神科病院に入院する患者数はおよそ38万人。そのうち、4割にあたる14万人が「医療保護入院」である。  今回の改正でここにメスを入れる背景として、同チームでは現在の精神科病院が抱える4つの課題を挙げている。①本人の同意なく入院させている患者の権利擁護、②入院の必要ありと医師が判断しても、保護者の同意がなければ入院させられない現状、③退院にも保護者の同意が必要になるため、入院が長期化しやすい、④本人の意思に反する入院により保護者と本人のあつれきがうまれやすい、などだ。  課題解決に向け、見直し案では、①入院手続きに保護者の同意を必要としない、②入院当初から早期退院を目指した手続きの導入、③患者の権利擁護のために本人の気持ちを代弁する人を選べるようにする、④早期退院を促進するように入院に関する審査の見直し、などを挙げている。  同チームでは、患者本人を地域全体で支えることが不可欠であるとし、日本の精神保健医療の仕組みを根本から変えることを目的に今後も検討を重ねるとしている。  一方、雇用拡大に向けて障害者雇用促進法も改正する動きがある。  近年、精神疾患により医療機関にかかわる患者数は増加傾向にあり、08年の患者調査によれば323万にのぼっている。もっとも増えているのは「うつ病」で約104万人。「統合失調症」(約80万)、「不安障害」(約59万人)と続く。  一方で、精神病床の平均在院日数はこの20年間で半年短くなっている。また、在院年数を見ても、10年以上入院している患者は88年の9万7000人から、08年には7万3000人に減少している。  では、なぜいま入退院制度を根本から変えようとしているのか。厚労省では精神障害者が病院に閉じ込められるのではなく、地域で生き、働ける社会環境が必要であるとし、障害者の雇用の在り方を検討する有識者会議を開いている。早ければ来年にも障害者雇用促進法の改正案を国会に提出する方針だ。現行の障害者雇用促進法では、民間企業に対し、来年4月から身体および知的障害者の雇用率を全従業員の2・0%にするよう義務づけている。有識者会議がまとめた報告書では、その対象について、統合失調症、躁うつ病、てんかんなどの精神障害者保健福祉手帳を持つ者にも拡大すべきだと指摘している。  従来から、精神科病院が閉鎖的であることは問題視されてきた。しかし、退院後の患者の支援体制を地域で担う場合、人材・医療機関の体制や雇用状況など、地域の実情がどのように影響するのかは不透明だ。厚労省が今回のとりまとめに費やした時間は全28回の議論のみ。強引な入院、安易な追い出しにつながらぬよう、今後の動きに注目したい。