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2012.09.21

日本初のいじめ国賠訴訟、原告完全敗訴

 2005年に自殺した埼玉県北本市の中井佑美さん(当時12歳)の両親が市と国に対して損害賠償を求めていた訴訟で9日、東京地裁は原告の主張をすべて棄却する判決を言い渡した。「自殺の原因は、いじめならびに学校側の不適切な対応にある」との訴えに対し、舘内比佐志裁判長は「いじめがあったとは認められない」とした。原告は、すでに控訴している。  裁判の大きな争点は、佑美さんに対するいじめの有無だ。裁判所は、遺書ならびに原告が主張してきた個別事例の一つひとつについて「原告が主張するような『いじめ』があったとは断定できず、自殺との直接的な因果関係があるとは認められない」とした。市の調査報告義務違反、文科省のいじめ対策などについても、「調査は市独自の裁量にゆだねられるもので適正を逸脱しているとは言えず、国の施策と佑美さんの自殺との因果関係はない」とした。  いじめはなかったとする今回の判決。しかし、その根拠が曖昧である感はぬぐえない。悪口や席替え時のトラブルなどについて裁判所は「不愉快に感じることはあったと思われるが、一方的・継続的でなく、いじめではない」としている。  佑美さんは同級生からトイレの便器に顔を押し付けるよう言われたこともあった。母親・節子さんが自身のメモをもとに訴えたこの点については、「いつ書かれたメモか不明瞭であり、事実を裏付ける客観的証拠に乏しい」とした。この一件は当時の担任にも報告していると原告は主張したが、担任はこれを否認。「そのような事実があれば、担任として校長に報告しているはずである」と証言したことについて、裁判所は「一定の合理性がある」と見なした。事実認定に基づく根拠の採用に関して、原告と被告で差異がみられる。  加えて、いじめの定義は平成19年に「当該児童生徒が、(中略)精神的な苦痛を感じているもの」と変更されており、継続性などは要件に盛り込まれていない。「不愉快な思いはしただろう」と佑美さんの心情を類推しつつも、裁判所が継続性などの観点からいじめでないと判断したことには疑問が残る。  判決後に行なわれた報告会で、佑美さんの父親・伸二さんは「いじめは複合的な問題で、コップの中に徐々に水がたまっていくようなもの。最後の一滴によってあふれたことで自殺にいたる。身体的外傷のように客観的な証拠がなくても、心を殺された結果、自殺にいたる場合もあるということを裁判官はわかってない」と語った。