最新号トピックス

2009.09.01

「学校を休めない子の心は…」 内田良子

 8月6日、今年もまた文科省から学校基本調査速報が発表されました。年間30日以上断続または連続して欠席した不登校の子どもたちの数は、小・中学校あわせて12万7000人でした。  新聞紙面の扱いは地味で、昨年より微減して、不登校は高どまりという報道でした。むしろ今年の特徴は大学・短大への進学率が56パーセントを超え過去最高となり、高学歴社会が進行していることが注目されました。  他方で小学生の児童総数が過去最低を更新し、少子化が進んでいると報じています。大学進学率や児童総数は実態を確実に写し出しています。しかし、不登校の子どもの数が現状を正確に伝えているかは極めて疑わしいと各方面で言われています。中学校の不登校対応の先生から話を聞くと、教育委員会から再三連絡が入り、病欠は不登校の数に入れないようにという指導が入るということです。  学校へ行くのがつらくて、からだに不調の出ている子どもの欠席は統計からはずされているようです。2002年、「不登校問題に関する調査研究協力者会議」が設置され、「不登校容認の風潮行き過ぎ?」という世論形成が行なわれました。翌年、最終答申が出るとすぐに不登校の数が28年ぶりに減少したと発表され、不登校対策は「見守るから働きかけへ」と転換されました。いわゆる学校復帰対策の強化です。3日休んだら不登校を疑い、家庭訪問や電話での働きかけを積極的に行ない、校内には不登校対応のプロジェクトチームがつくられます。  担任、養護教員、生徒指導、スクールカウンセラー、管理職などがチームをつくり、マニュアルに基づいて取り組みます。いままでは教室に居場所がなくなった子どもたちの駆けこみ寺だった保健室が教室復帰の基地になり、養護教員は学校復帰を働きかけるコーディネーターの役割をふり当てられたりしています。対策の進んだところでは、「子どもの心のことはスクールカウンセラーに。からだのことは養護教員に。教育のことは教員に」と分業化されていくということです。「自分が担任しているクラスに不登校の子どもが出ないかぎり、学校にいても不登校の子どもの姿が見えなくなっている」と心ある先生は嘆いています。  大阪の「不登校半減政策」など、統計上の「数減らし」のために全国でつくられた学校復帰マニュアルは、専門家の力を活用し、子どもを学校に戻す確実性を高めてきた手法です。ねずみ穴をふさぐように、「すべての道は学校に通ずる」対策がほぼ出尽くし、ルーチンワーク化している状況がひろがりつつあります。  子どもがなぜ登校を拒否し、不登校の道を歩むのか、その原因や理由・子どもの側の必然性について考え、問い直すという学校サイドの良心の営みは失われつつあります。  いじめや部活での封建的な先輩後輩の上下関係、成長期の肉体を蝕むハードな練習、先生からの子どもの人格を傷つける不適切な指導などで、子どもたちは心身ともに傷つき、疲弊しています。学校での居場所を失った子どもたちは、その苦しさを心身症状で訴えます。こうした不調に対し、学校はすぐに心療内科や精神科を受診することを強くすすめるようになりました。受診すれば診断名がつき、多くの場合、精神科領域の薬が処方されています。全国各地の親の会で、薬を飲み続けながら登校し、学校を休めない子どもたちが増えていると聞きます。今や不登校問題の核心は子どもが学校を休むことが問題なのでなく、学校を休めないことが問題なのです。 (子ども相談室「モモの部屋」主宰)