最新号トピックス

2008.07.02

虐待相談件数 初の4万件越え

 全国の児童相談所が相談を受け対応した児童虐待件数が07年度、過去最多の4万418件(速報値)にのぼったことが、厚生労働省のまとめでわかった。90年の統計開始以降、過去最多だった昨年度より3295件上回った。統計を開始した90年には1101件だった相談件数は年々増加の一途をたどっており、相談件数1万件を超えた99年より8年足らずのあいだに、その4倍を超える結果となった。  相談件数の対前年度比を都道府県別に見ていくと、減少したのは福井県(0・75倍)▽島根県(0・88倍)▽長崎県(0・88倍)をはじめとする13府県。福岡県は全国で唯一100件以上の減少が見られた。逆に増加したのは、北海道(1・46倍)▽石川県(1・45倍)▽和歌山県(1・45倍)など34都道府県。なかでも神奈川県(924件増)と北海道(463件増)は大幅な増加が見られた。  児童虐待の相談件数が増えた背景には「社会的な意識の高まりなどが増加の一因だが、実際の虐待件数自体も増えているのではないか」と厚労省は見ている。

虐待は本当に 増加したのか

 愛知県には、弁護士と市民が中心となって1994年に設立した「子どもの虐待防止ネットワーク・あいち」(通称・CAPNA)がある。CAPNAでは電話相談、調査研究、家庭支援などの活動を展開しており、児童相談所と連携して弁護士が、子どもの緊急一時保護や親権喪失宣告の申し立てなどをする「危機介入」も活動の大きな柱となっている。今回の相談件数の増加に対して、CAPNAの弁護士・岩城正光さんは「虐待件数が急激に増えたというより、認知度が高まったことが大きい」と指摘する。認知度が高まった要因としては、児童虐待防止法改正案の可決や厚労省の「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」の報告などが挙げられる。改正児童虐待防止法は、08年4月1日より施行されており、改正のポイントは、裁判所の令状に基づく家庭への強制立ち入り調査や児童への接近禁止命令など、児童相談所の権限をこれまでより強化したところにあった。

数字で測れる 問題ではない

 岩城正光さんは、今回の増加を潜在的な虐待が明るみに出てきた問題だと指摘しているが「そもそも虐待の背景にある地域や連帯の崩壊が進んでおり、子育てが『親任せ』になっている現状は依然、深刻だ」と話している。  社会福祉法人・子どもの虐待防止センターの菅江佳子さんは、相談件数の増加について「児童虐待は数字の増減だけでは計れない問題だが、個人的な実感からは増えているように感じる」と話す。センターは91年に市民の手で設立され、97年には社会福祉法人に認可された。センターではおもに子育て中の母親から年間4000件以上の電話相談を受けている。  センターの菅江佳子さんは児童虐待の増加要因について「相談を受けていると、地域社会の希薄さと親の意識の変化を感じる。とくに後者は、子育てという部分において強く感じる。親自身が親になるまで子どもに触れる機会がなく、どうしても親が一人で抱え込まざるを得ない状況だ」と話した。

不安しか見えず

  虐待などを受けた子どもが逃げ込めるシェルターを運営する「カリヨン子どもセンター」の坪井節子弁護士も、今回の増加について「実感として虐待は増えている気がする」と話す。カリヨン子どもセンターは04年に市民と弁護士で立ち上げられたNPO団体。今年4月からは社会福祉法人としてシェルターと自立援助ホームの運営を行なっている。これまでシェルターには10代後半の子どもを中心に110名が入居。このうち約8割が虐待を経験していた。坪井さんは、虐待が増加した要因についてこう語る。  「現場にいると、虐待は崩壊した家庭だけでなく、ごくふつうの家庭でも起きていると感じる。親の痛みや孤立感といった困窮が深まり、親には不安しか見えず、子どもにしわ寄せが行くという状態になってしまった。ただ、カリヨンでは、子どもたちに『生きていてもいいんだよ』というメッセージを丹念に丹念に伝えてることで、元気を取り戻すようすを見ている。いまこそ『いっしょに生きていこう』というメッセージを傷ついた子どもや孤立した親たちに伝えることが求められているのではないでしょうか」。