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2008.06.13

新潟市 フリースクールの13名へ出席督促書 学校外の居場所を狙い撃ち?

 5月末、新潟市の複数の公立小学校長が学校に登校していない子ども13名の保護者に対し出席督促書を渡した。今回の出席督促書はフリースクール「ホームスクーリング塾 P&T」(今年7月に名称変更予定)に通う子どもたちにしか渡されていない。新潟市教委は督促理由を「今回のケースは不登校ではなく、保護者が学校へ出席させないケースと判断したため」だと説明した。また、P&Tについては「存在を知らなかった」と話している。本紙取材によれば、今回、督促を受けたすべてのケースが、子どもの意志に基づく不登校だった。 ◎市教委 「居場所を知らなかった」  今回、新潟市教委が出席督促書(※メモ参照)を送付したのは13名。過去には出席督促書が送付されるケースは全国的にめずらしくなかったが、同時に多人数へ送付されたケースは稀である。  市教委によれば、昨年10月以降、複数の保護者から「ホームスクーリングをしたい」との理由で欠席させるとの訴えが相次ぎ、今年2月には一度も学校に登校していない子どもの保護者からも同様の訴えによる欠席があった。これを受け市教委は「異常な事態」だと判断。各学校長と協議のうえ督促書が送付された。  督促書を受けた親の児童13名は、フリースクール「ホームスクーリング塾 P&T」(代表・渡辺真由美氏)に通っている。  P&Tは今年4月から開設したフリースクール。週5日開設しており、現在、6歳~15歳までの23名が通っている。P&Tは廃工場を利用して、スポーツや英語講座などを行なっている。子どもをおもにサポートするのは保護者と2名のスタッフ。「この居場所はお母さんたちが中心になって立ち上げた『親立』です」とスタッフが語るとおり、保護者の参加率が高い。常時10名以上の保護者がP&Tに来ており、運営を手伝っている。  P&Tは「子育ての責任者は親。学校やフリースクールに子育てを丸投げするのではなく、親子がともに育ちあうこと」を理念にしている。また、「一人ぼっちにならない子育てだから、わが子と他人の子と自分が好きになれる」という理念もあり、保護者どうしのコミュニティづくりにも力をいれている。  今回、督促をされた親から話を聞くと、すべてのケースで、子どもから「学校に行きたくない」と訴えていたことがわかった。ある親は「学校に行こうとするとお腹が痛くなったり、まつ毛を全部、むしってしまったり、吐いてしまったり、とても行かせられる状態じゃなかった」と話した。またほかの親からは「『お願いだから行って』と言っても一歩も学校へは進まなかった」や「先生がすごい勢いで生徒の頭を叩いたのを子どもが見て、それ以降、学校を怖がっている」などの話が聞かれた。また、一度も学校へ通っていない5組の親子の場合は、いずれも就学時検診など登校前に学校へ接した経験から不登校が始まっていた(そのうち2組はすでに兄弟が不登校していた)。一度も学校に通わなかった6歳の子は「先生の心が黒っぽくて、それが移りそうで怖かったから」だと理由を話した。このほか、P&Tに通う小学生からは「赤ちゃん扱いされるのがイヤだった」(9歳)、「たくさん『早くしろ』って言われるけど、できないから」(8歳)などの話があった。  小学4年生から不登校の長谷川卓也くん(13歳)は「僕は学校で子ども扱いをされるのがイヤだったし、学校は匂いからしてイヤだった。でも、学校に行かなくなってからは、すごくつらくて何回も死にたいと思った。包丁を持ち出したこともあった。でも、僕はここで生き返ることできた」と話してくれた。 ◎保護者 「一度も面談ない」  P&Tの親たちは今回の督促書の件について「なぜ市教委は私たちと一回も面談や話し合いをせず、督促書を出したのかわからない。督促の前にちゃんと話し合いたかった。学校とはちゃんと話し合いがされていたのに……」「一度でいいからP&Tを見に来てほしい」「P&Tは私たち不登校のこどもを持つ親が協力してつくりだした場所。ただそれだけなのにまちがったウワサや報道、督促書によって傷ついている」などと話している。一方、本紙取材に対し新潟市教委は「P&Tという存在を知らなかった」とし、今後は督促が出された親との話し合いを進めていく方針だ。 ■メモ・出席督促とは  学校教育法第17条、施行令21条によると保護者が子どもを「正当な理由がなく欠席させている」場合、教育委員会は保護者に対し出席を督促することができる。これは義務教育を定めた憲法第26条に基づく規定。督促を受けても保護者が就学させない場合は、学校教育法第144条に基づき、10万円以下の罰金に処される。ただし、子どもが学校をいやがるなど、登校によって子どもが傷つくおそれのある場合、親が子どもを保護することは「出席させない正当な理由」にあたる。90年、91年に福島県と石川県で出席督促書が不登校の子の親に送られ問題になったが、その後、教育長が謝罪して出席督促書を撤回。また、昨年5月金沢市でも不登校の子の親に出席督促書が送られ、保護者と市教委が話し合い、「今後は督促書を送付しない」ことで合意した。