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2009.05.18

体罰“適法”逆転判決 最高裁

 熊本県天草市(旧、本渡市)内の公立小学校に通う当時小学2年生だった男子児童(当時7歳)が同小学校教員より体罰を受けたとして、同市を相手取り損害賠償を請求していた訴訟が2009年4月28日、最高裁判所第三法廷(近藤崇晴裁判長)にて結審した。最高裁は、原告の訴えを認めた1審、2審判決を破棄し、原告側の請求を棄却。これにより、原告側の逆転敗訴が確定した。

◎ 一審 「感情的行為」、二審 「年齢差考慮」、最高裁「教育指導の範囲」

 判決文によると、2002年、教員の背中に覆い被さる・上級生を蹴るなどしていた男子児童に対して注意したところ、男子児童は教員のでん部を蹴って逃げた。これに腹を立てた教員は男子児童の胸元をつかんで壁に押し当て、大声で「もうすんなよ」と叱責。これを機に、男子児童は夜中に泣き叫ぶ、食欲が低下する、円形脱毛症が見られるようになった、などの症状を訴えた。

◎ PTSDとの因果関係は

 原告は教員の威圧的な対応により、男子児童が心的外傷後ストレス障害(PTSD)になったとし、教員と天草市を相手取り、およそ350万円の損害賠償を求める裁判を起こした。  1審の熊本地裁では「個人的な感情をぶつけたもので、教育的指導の範囲を逸脱している」としたうえで、原告の主張していたPTSDとの因果関係も認め、被告におよそ65万円の支払いを命じた。2審の福岡地裁では、PTSDについては否定したものの、「教員と男子児童の年齢・体格差を考慮すれば、男子児童が受けた恐怖は相当のものである」とし、1審の判決を支持。被告におよそ21万円の支払いを命じた。1審、2審とも、「胸元をつかむ」という教員の行為は、学校教育法第11条に規定されている体罰に該当すると認めた。  これを受け、最高裁第三小法廷(近藤崇晴裁判長)で行なわれた上告審では、5人の裁判官全員一致で、1審、2審の判決を破棄、原告の請求を棄却するとの判断を下した。これにより、原告側の逆転敗訴が確定した。  判決理由について近藤裁判長は「教員の行為が穏当を欠くものであったことは認められるが、悪ふざけの罰として、児童に肉体的苦痛を与えるために行なわれたものではない。教員の行為は、その目的、態様、継続時間などから判断して教育的指導の範囲を逸脱するものではなく、違法性は認められない」とした。

◎ 児童ならば暴力行為?

 体罰について、文部科学省が出した通知(※メモ参照)では、「児童生徒に対する物理的な力の行使により行なわれた懲戒は、その一切が体罰として許されないというものではない」としている。今回の最高裁判決もそれを支持するかたちだ。  一方、児童生徒による暴力行為の現状などをまとめた「生徒指導上の諸問題の現状について」では、「対教師への暴力」に該当する行為の一つとして「教師の胸ぐらをつかむ」という項目が例示されている。「胸ぐらをつかむ」という行為が主体者によって、教育的指導となるか、暴力行為となるかが分かれることになる。この点について文科省は本紙取材に対し、「体罰は許されないのが前提だが、最高裁の判決については個別事案の事実認定につき、文科省としてコメントする立場にない。また、例示された生徒の暴力行為と今回の教員が行なった指導は、行為としては同じだが、個別の問題であり、同列のものとしては考えていない」とコメントした。 ◎メモ「体罰」  教員による体罰の行使は、学校教育法第11条によって禁止されている。  これについて、2007年2月5日に出された通知「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」では、「具体的にどのような行為が体罰にあたるかを機械的に判定することは困難」としつつ、「児童生徒に対する有形力(目に見える物理的な力)の行使により行なわれた懲戒は、その一切が体罰として許されないというものではない」との見解も同時に示している。  体罰に当たらない具体的な行為として、「放課後の教室に居残りさせる」「授業中、教室内に起立させる」「学習課題や清掃活動を課す」「学校当番を多く割り当てる」「立ち歩きの多い児童生徒を叱って席につかせる」などを挙げている。