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2008.04.26

東京地裁 大江・岩波沖縄戦裁判 集団自決は「軍が深く関与」

 3月28日に大阪地裁(深見敏正裁判長)で、「大江・岩波沖縄戦裁判」の判決があった。判決では戦隊長ら原告の請求をすべて棄却した。原告は、旧日本軍が住民に集団自決を命じたとした岩波新書『沖縄ノート』などの記述で、名誉を傷つけられたとして、大江健三郎氏と出版元の岩波書店を訴えていた。 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  大阪地裁の判決によると「集団自決には旧日本軍が深く関わった」とし、「元戦隊長らが自決を命じたという記述が真実であると断定できないが、記述には合理的資料あるいは根拠があり、真実と信じるに相当の理由があった」とし、原告側の請求を棄却した。原告側は4月2日に控訴している。  裁判で問題となったのは座間味、渡嘉敷両島での集団自決。渡嘉敷島では329人、座間味島178人、慶留間島53人が犠牲になった(人数については諸説ある)。  2005年8月5日、旧日本軍の戦隊長と遺族が大江健三郎氏と岩波書店を相手取り、大阪地裁に訴訟を提起した。  原告側の主な訴えは、【1】『太平洋戦争』(著・家永三郎/1968年刊)、『沖縄ノート』(著・大江健三郎/1970年刊)の出版差し止め、【2】名誉毀損と敬愛追慕の情を侵害したことに対する謝罪広告の掲載、【3】岩波出版、大江健三郎氏への損害賠償命令、であった。

◎軍駐屯地のみ集団自決

 集団自決に「旧日本軍が深く関わった」理由を次のように説明された。まず、多数の生存者が旧日本軍から自決用に手榴弾が配られたと証言していること、手榴弾は戦隊にとって極めて貴重な武器で、軍以外からの入手は困難だったこと、集団自決が起きたすべての場所に軍が駐屯し、駐屯しない場所では発生しなかったこと、などを「軍の深い関与」を認定する理由として挙げた。  そのうえで座間味島、渡嘉敷島の各戦隊長を頂点とする「上意下達の組織」があり、元戦隊長らの関与は十分に推認できるが、「自決命令の伝達経路は判然とせず、命令それ自体までを認定することには躊躇を禁じ得ない」とした。しかし、住民の証言集など元戦隊長の関与を示す内容は「合理的で根拠がある」とし、大江氏らが「信じるに相当する理由があった」と結論づけた。  原告側は4月2日、「判決は法解釈の次元においても、事実認定の次元においても不当なもの」とし、控訴した。

◎検定意見へ再度、撤回要求

 一方、被告側の支援を進めていた大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会ら3団体も判決にあたって声明を発表。  声明では、旧日本軍の関与や元戦隊長がスパイ容疑で住民を処刑した事実を認定したことを評価した。また06年度の教科書検定の検定意見は「係争中に出された戦隊長の『陳述書』が根拠になっており、その根拠が判決によって否定されたのであるから、直ちに集団自決の命令・強制を示す記述を回復させるべき」と訴えていた。 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  判決を受けて4月24日、被告を支援していた市民側の集会「沖縄戦検定意見撤回を求める4・24全国集会」が開催される。内容は今回の大阪地裁判決の報告や暉峻淑子さんの講演などが予定されている。場所は豊島公会堂(東京)、時間は6時30分から。参加費は800円。問い合わせは下記まで。連絡先03・3264・2905。 ※2008年4月15日号掲載