最新号トピックス

2008.04.26

集団自決“軍の強制”認めず 文科省 教科書検定問題

 沖縄戦の「集団自決」をめぐる高校日本史の教科書検定問題(メモ参照)で、12月26日、渡海紀三朗文科大臣は、教科書検定審議会(杉山武彦会長)の調査審議を受け、訂正申請を承認した。今回承認された教科書は、出版社6社の8点。「集団自決」についての軍の関与を認める記述を認めたものの、「軍による強制」という表現は認めず、「強制」の記述削除を求めた検定意見も撤回しなかった。 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  今回問題とされた教科書は、出版社が06年4月に検定申請したもの。教科書検定審議会は、07年3月の教科書検定で「集団自決」について「軍の強制」という記述に「誤解するおそれのある表現」という検定意見をつけ、承認のためには「修正」が必要としていた。これを不服とし、沖縄県では大規模な検定撤回を求める県民大会が昨年9月に開催され、出版社も11月に訂正申請をした。  文科省によると、検定審の日本史小委員会は訂正申請を受け、12月末までに計7回の会合を開催し見解をまとめた。訂正申請は、通常、誤字や年代の誤りなど単純な内容が対象で、文科省は検定審を開かずに承認しており、今回のように検定審を開くのは初めて。  委員会の発表によると、「集団自決」について「住民から見れば、当時のさまざまな背景・要因によって自決せざるを得ないような状況に追い込まれたとも考えられる」とする一方で、「軍の命令により行なわれたことを示す根拠は、現時点では確認できていない」との見解を示した。また、沖縄戦全体については「軍官民一体となった戦争体制のなかで地上戦が行なわれた」という見解を示した。 「集団自決」の見解を受け、軍の強制を明記していた5社7点の出版社は、再修正をせまられた。  三省堂は「日本軍に『集団自決』を強いられた」を「軍の関与によって集団自決に追い込まれた」に、東京書籍も「集団で『自決』を強いられた」から「軍によって『集団自決』に追い込まれた」と修正した。実教出版は「日本軍は(中略)手榴弾で集団自害と殺し合いをさせ」から「強制的な状況のもとで、住民は集団自害と殺し合いに追い込まれた」という記述に変更した。各教科書とも、集団自決の背景説明については、より詳細な記述が認められ、「集団自決」を「強制集団死」と見る学説を注釈にいれる教科書も見られた。なお、東京書籍は軍から集団自決を指示されたという住民の証言を新たに追記した。  一方、『教科書検定意見撤回を求める県民大会』実行委員会は、今回の訂正申請に対して、よりくわしい背景が記述されたことは評価した。しかし、「誰に集団自決を追い込まれたのか、その主語としての『日本軍の強制』が抜けたことは重大な問題」とし、「検定意見が撤回されていない」ことも含め、再度、要請行動を行なうことを決めた。 ◎メモ「教科書検定」……教科書検定制度は、学校教育法に基づき1947年に制定された制度。検定では、すべての小中高・特殊諸学校で使用される教科書が検定基準に適合するかどうかを文科大臣が審議する。ただし、実質の審議は文科大臣の諮問機関「教科書検定審議会」に委ねられている。学校では、学校教育法によって、原則的には検定を経た教科書を使用しなければならないと定められている。  また、日本国憲法では「検閲」を禁止しているが、教科書検定は「検閲」に当たるのではないか、という指摘がある。1965年から1997年にかけて行なわれた「家永教科書裁判」でも、この点が争点になった。家永裁判の判決では、検定は検閲ではないとしたが、一部、国の「行きすぎがあった」ことを認めた。 ※Fonte 2008年1月15日号掲載