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2017.04.26

問題は不登校ではなく通学偏重主義 荻上チキ

6面チキ②  今号は評論家・荻上チキさんのインタビューを掲載する。本欄では不登校・学校制度・ひきこもりなどについて荻上さんの考えをうかがった。 ●問題は不登校ではなく学校制度 ――不登校について、どうお考えでしょうか?  僕の身近には不登校当事者が多いし、僕自身、小学校から中学校のあいだ、いじめにあったり、仮病を使ったりして、学校をちょくちょく休んでいたんです。そういう経験もあり、問題意識を持って取り組んでいます。  まず前提として、不登校になる人にはそれぞれの事情が個別にあるのですから、そういった個別の児童に対しても平等に教育の機会が確保されなければならないと思っています。ただ、いまこの国は、「通学中心主義」になっていて、通学以外の形で教育機会を提供するということが弱いんです。教育機会確保法が成立して、夜間中学やフリースクールも重要だ、というふうになりましたが、これまではずっと見落とされてきました。 ●通学偏重主義からの脱却を  これまでの行政の支援というのは、いわば「通学支援」なんです。実際はそれぞれの学校で、「無理して学校に行かなくてもいいよ」と現場の職員が言ってくれるところもあったり、発達障害などの当事者に対して必要な支援をしていこう、という場も少なくはありません。ですが、行政の態度としては、あくまでも通学をサポートする、という態度になっています。  憲法上は、教育機会の確保の手段はなにも学校にかぎられているわけではありません。親には学校に行かせる義務があるのではなくて、教育を受けさせる義務があるんですね。しかし、この国の教育は通学による学校教育というものに著しくかたよっています。その結果、クラスという集団の中の一人になって、黒板に向かって45分間ノートをとり、休み時間は同世代の友だちとわちゃわちゃする、という「あのスタイル」にミスマッチな児童というのが想定されないまま、教育制度が進んできてしまったわけです。ほかにも通信教育とか放送教育とかいろいろな形があるんですが、あくまで「サブ」ですよね。平等に選択肢が用意されていないのが現状です。その状況をまずは是正しなくてはいけないと思います。 ●学校自体がストレッサー ――そもそも学校自体が、たいへん息苦しい場所になっていると思います。  最近、「学校ストレス」という言葉をつかって、学校のなかで発生するさまざまなリスクを言語化する動きが出てきています。考えてみれば、同じ年に同じ地域に生まれたという理由だけで、まったく価値観も親の職業もちがう人たちが30人、毎日集められる。そんな生活を9年間は最低続けなくてはいけない、というのは、すごいことです。  大人なら、「この人ちょっと無理だな」と思ったら離れる、ということができるわけです。かんたんではないですが、会社を辞めるとか引っ越すとか、縁を切ることは可能です。でもクラスメイトとは縁を切れないんですよね。クラス替えを自分の意思ですることはできないので、強制的に関係性が維持されることになる。つまり学校という仕組み自体に、そもそものストレッサ―があるんです。 ●問題は「ストレスに弱い子ども」ではなく「ストレス社会」  それに加えて、ケータイ持ち込み禁止、ゲーム持ち込み禁止、飲食禁止などの校則もあります。これも大人だったら、勤務の合間でガムを食べて、「次にそなえよう」とか、自由にできるんですが、それができない。大人の社会よりも子どもの社会のほうが、自由度が著しく低いんです。  本来は子どものほうが大人よりも脆弱なので、より安全な空間として学校を設計する必要があるはずです。たとえばその空間から離脱しやすくするとか、いろんなセーフティネットを学校のなかにつくっていく必要があります。  しかし実際は、一般の市民社会よりも、むしろより厳しいルールを子どもたちに押しつけている。しかもそれを経験してきた大人たちが、「ストレスに慣れることによって、大人になって社会に出る耐性が身につく」なんて言うわけです。しかし、この社会がストレス社会なんだったら、まずそれを解決しなければいけないんですよ。「学校でストレスに慣れよ」という議論は、まったく思考が逆転してしまっていると思います。 ●ひこもりへの問題視は、社会が不完全だから ――ひきこもりについてはどう考えますか?  ひきこもりの問題が投げかけているものはいくつかあると思うんですが、「社会と接しないと生きていけないこの社会」っていうのは、そもそも不完全ではないか、と僕は思うんです。  これまでの社会設計はあまりにもコミュニケーションを重視しすぎてきました。とくにここ数十年はサービス産業がメインになってきているので、どうしてもコミュニケーション能力がより求められるような社会になってきています。  不登校にせよひきこもりにせよ、家庭と職場、または家庭と学校という2つの場所以外の場所が想定されないまま、この社会は進んできたと思います。よく第三の場所と言いますが、家でも学校でもない、あるいは家でも職場でもない場所、居心地がよく、自分の荷物をおろせる場所というものが必要です。 ――ありがとうございました。(聞き手・茂手木涼岳・子ども若者編集部) ※インタビュー完全版は『不登校新聞』5月1日号にて掲載 ●荻上チキさんの略歴  (おぎうえ・ちき)1981年、兵庫県生まれ。評論家、編集者。NPO法人ストップいじめ!ナビ代表理事。言論サイト「シノドス」編集長。いじめ問題、フェミニズム、サブカルチャーなど、幅広い分野で言論活動を行っている。主な著書に『ネットいじめ――ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』(PHP信書)など多数。