最新号トピックス

2013.03.19

連載・大津いじめ自殺

 大津いじめ自殺が起きてから、1年3カ月後、第三者調査委員会による「調査報告書」が提出された。調査委員は市側と遺族側双方が推薦した計6名。委員には教育評論家・尾木直樹氏、弁護士・横山巌氏(委員長)も名を連ねた。委員らは延べ56人から計95時間に及ぶ、直接の聞き取り調査を実施。ほかの報告書と比べても非常に事件経過が緻密に記された報告書を作成した。 ◎ なかった「自殺の練習」  報告書からは、いままでの報道があまりに断片的で、不確かであったことを痛感させられる。  たとえば「自殺の練習」。大津事件がクローズアップされたのは、この「自殺の練習」からであった。その後、いじめ現場を教員らが見ていたこと、市教委が校内アンケート結果を公表していなかったことなどに注目が集まり、しだいに報道が過熱。しかし、そのきっかけである「自殺の練習」は「させられていない」と調査委員会は結論づけた。加害少年たちが教室の窓から身を乗り出し「やってみろ」と亡くなった少年に対し、再三、声をかけていたこともあったが、「自殺の練習」ではなかった。情報ソースは、少年らの同級生の兄弟が回答した校内アンケートであった。また「多額の金銭要求」や「葬式ごっこ」も報道されたが、調査委は「事実は認められない」と結論づけている。本紙でも、少年が「ぼく、死にます」という電話をしていたことを報道したが、おそらく、その電話はなかった。  なぜこのような事態が起きたかといえば、校内アンケート結果や訴状内容に基づいて報道したからである。誤報とまでは言えないが、現段階では事実とは異なると言える。調査委は、行きすぎた報道により、調査に支障が出たことや無関係の者にまで誹謗中傷がおよんだことを取り上げ、誠意ある報道を提言していた。これらの点についてメディア自らが報道しないことには憤りを感じている。本紙でもこの指摘を真摯に受けとめ、正せる事実は正し、いま一度、大津いじめ自殺はなんだったのかを問い直すため、短期連載を開始する。 ◎ 滋賀県のいじめ状況  文科省調査によれば、滋賀県のいじめ認知件数は229件(11年度)。1000人あたりの認知件数は1・3件。全国平均が5・0件であり、滋賀は全国でも5番目にいじめ発生率が低い。ちなみに前年度も同様の件数、全国順位を推移している。しかし、発生率、認知件数が低いことによって「いじめが少ない地域」だとは言えない。むしろ「現実を反映していない」、あるいは「いじめが見えない状況に陥っているのではないか」ということを、本紙で取材した滝充氏(国立教育研究所)も指摘している。なお、滋賀県の不登校児童生徒数は1496人(11年度)。1000人あたりに占める不登校数は11・6人。全国平均は11・3人。平均並であった。 ◎ 道徳教育推進校に  事件が起きた大津市立中学校の全校生徒数は879人(13年1月時点)。滋賀県内では屈指の大規模校である。その特徴は、学校選択制が採用されていること、道徳教育実践研究事業の推進指定校であったことなどであろう。  自殺で亡くなった少年(以下・少年)が在籍していたクラスは36人学級。報告書によれば1学期は規律が守られていたが、2学期からはクラス内の風紀が乱れ、紙飛行機がひんぱんにクラス内で飛び交うようすが見られたと言う。  少年と加害少年Aと少年Bとの関係は1学期の後半から。少年はなぜかそれまで関わっていた同級生たちと離れ、夏休み前から、少年AやBと携帯ゲーム、プロレスごっこで遊ぶようになる。その後、夏休み中には3人で、花火大会やテーマパークにも行っている。夏休み当時のようすは目撃情報がない。しかし、いじめの兆候が見られるようになったのは夏休みが明けた9月8日からのことであった。 (つづく) 連載の続きは本紙にて(月800円/申込ページはこちら