最新号トピックス

2013.03.08

【新連載】ひきこもるキモチ

isizaki 254号より新連載「ひきこもるキモチ」を開始する。ひきこもり経験を持つ元当事者に、「なぜひきこもったのか」「ひきこもっていたとき、どんなことを考えていたのか」「自分の将来や親のことについては」など、今だからこそ話せるひきこもり当時の率直な思いを執筆していただく。今回の執筆者は石崎森人さん。  僕がひきこもったきっかけは、就職した会社を入社直後に退職し、精神疾患が悪化したからだった。 では、もっと別の会社に就職していたらひきこもっていなかったかというと、そんなことはないと、今なら言える。 ひ きこもっている当事者や家族にありがちだけど、ひきこもったきっかけに原因を追求すると、ひきこもりからなかなか脱せない。なぜなら、きっかけとは、拳銃 の引き金のようなもので、それまでに長い時間をかけて弾を込めていた時期があり、長い人生をかけてひきこもる準備をしていたとも言える。そのきっかけを生 んだ人生の積み重ねがなんだったのか。それを理解して初めて次の行動ができたのだった。 父親との 確執から 僕のひきこもりへの積み重ねは、端的に言えば「自己嫌悪」であった。心の奥で、この世には自分ほど憎くて嫌いでダメでクズな人間はいない。そう 27年間思って生きてきた。  僕の父親は、他人の気持ちの理解が、感覚的に分からない人で、さらにこだわりが強く、独特な理屈で自分にも他人にも厳しい人であった。 子 どもの自分には、いつ何で怒られるかわからない。子どもなのだから、いろいろなことができないのは当たり前なのに、できないことを執拗に責められる。自分 がしたい話ばかりする人で、理解できない難しい話を、自分がしたいように延々と続ける。子どもの話は「くだらない」と一蹴する。本来、自分を守ってもらえ る一番身近な大人が、一番の怪物として僕を支配していた。大人になってみれば、父は軽度のアスペルガー症候群だということがわかるのだけど…。 小 学校に入学したときには、自己存在の不安定感でいつも緊張していたので、人見知りが激しく、極端に臆病で、運動音痴だった。親と社会へのせめてもの反抗と して、勉強を放棄したので、劣等生として扱われるようになる。そんな自分と世界が、嫌いで嫌いで仕方がなかった。泣いても誰も助けてくれないと思い、強が るように生きてきたが、その自己嫌悪を、大人になっても引きずっていて、何か失敗するたびに、猛烈に自分を責めた。 嫌いな自分を大切にす るはずもなく、不健康であることを誇りに思い、大学時代には、抗うつ剤を始め、向精神薬を数種類服用するようになっていた。不健康な見た目で就活も苦労し て、さらに自己嫌悪が悪化。そして、就職した会社を3日で限界を迎えて自殺未遂を起こして精神病院に入院する。ここからひきこもりが始まった。だけど、ひ きこもりの本当の原因は、長い長い世界と自分への嫌悪の積み重ねだったんだと思う。(つづく)