最新号トピックス

2011.02.01

高校無償化増税問題 不登校世帯に対策とらず

 高校無償化の実施にともなう税制改正で、不登校や高校中退者がいる世帯の税負担が増える問題をめぐり、政府は「負担増になる家計には何らかの対応を取る」としていた方針をひるがえし、新年度予算案で負担軽減策を盛り込まない方針を決めた。高校無償化と連動する形で、不登校世帯などには逆に不利益が生まれる仕組みが固定化する見通しとなった。  文部科学省高校無償化支援室の担当者はFonteの取材に対し「定時・通信制高校生徒への奨学金制度を予算要求したが実現しなかった。不登校世帯への対策は検討していない」と説明した。  また、民主党本部は「大多数の子は高校に通っており、まず高校に通える状況をつくり、その後、さまざまな事例について対応を考えたい。ただ、負担増になる家庭を特定するのが難しく政策も立てづらい」とコメントした。 文科省と民主党はともに、新たな対策については検討する具体的な場を設けていないという。  この問題では、民主の川端達夫・文科相(当時)が昨年3月の参議院文教科学委員会で「(影響が出るまで)あと1年半以上の期間があるので、それまでの間に対策を取ることを前提に検討してまいりたい」と答弁。  2010年度の税制改正大綱にも「現行よりも負担増となる家計については適切な対応を検討します」と明記され、政府として不登校世帯などに何らかの対策を取る方針を示していた。

◎制度設計段階から大臣も問題指摘

 高校無償化にともなう増税により、不登校世帯などが一方的な負担増となることには、制度設計の段階で政府内からも疑問視する声が出ていた。無償化は新政権の公約の目玉とも言えるが、「若者の成長を社会全体で支える」という理念の背後で、より手厚い支援が必要な層が置き去りにされた形だ。  「高校などに行かない人が1万6000人ぐらいいる。いろんな事情がある中でのことだと思うんです。負担増について、宙に浮かないように考えていかなければいけない」(中川正春・文科副大臣)  「高校に行かない、あるいは中退する若い人たちが近年増えている。高校に行っていない、負担増ばかりだという家庭は現実に生まれると思うので、トータルな政策の中で配慮をお願いしたい」(社民・阿部知子衆院議員)  無償化にともなう特定扶養控除の縮減を決めた、2009年12月の政府税制調査会。締めくくりの審議で、対策を求める発言が与党内から相次いだ(肩書きは発言当時)。税調での議論を受けて「適切な対策を検討する」との一文が税制改正大綱には盛り込まれた。  民主党の政権公約では、高校無償化は増税を前提としたものではなかった。だが、政権交代後に財源が不足することが明白となり、特定扶養控除の縮減が急浮上した経緯がある。  政府は「控除から給付へ」との考え方を掲げる。所得控除は高所得者に有利な仕組みで、所得再分配のためにも、控除を減らし、支援が必要な層にターゲットを絞った「給付」に切り替えるとの考え方だ。高校無償化もこの枠組みの中にある。  問題は、給付のターゲットをどう選ぶかだ。高校無償化では、不登校や高校中退、定時・通信制など、経済的支援を必要としている率が高い層で、控除が減らされ給付の対象にもならない結果となった。  高校無償化の実施後に政権を離脱した社民の阿部議員は「学びの権利や基本的生存権を保障しようという理念だったが、今回はフリースクールや朝鮮学校に通う子の家庭の負担が増加する」と批判。  また、今後は23~69歳の扶養親族に対する成年扶養控除も段階的に廃止される方向といい、ひきこもりなどを念頭に「なんらかの理由で働けず家にいる人たちの家庭も増税される『最後の止まり木』である家庭にいる人たちを突き落とすような政策だ」と批判した。