最新号トピックス

2013.01.17

品川区いじめ自殺、少年はなぜ追いつめられた?

 昨年9月26日、品川区で中学校1年の少年がいじめを受け続け、自らの命を絶ちました。当時大津で中学2年の少年がいじめで自殺した事件に、学校と教育委員会が隠ぺいを図ったために大きな社会問題となっていました。品川区はいち早くいじめを認め、調査対策委員会を立ち上げました。その報告書を編集部が入手し、読む機会を得ましたので要旨をレポートし、理解の一助としたいと思います。  調査委員会は運営に客観性と透明性を担保するため、外部委員6名で構成し、当事者である学校は排除し、教育長以下を事務局としています。この結果、いじめがエスカレートし、一人の少年を死に追いやっていく学校現場の無力さが手に取るようによくわかります。  この中学校は小中一貫校であり、校長は「品川のフラッグシップ校、品川のシンボル、重要なポジション、誇りを持てと教員に呼びかけてきた」と聞き取り調査に答えています。本年度、新任の教員が13人(学校全体の20%)の学校で研究主題は「小中一貫校における児童の資質、能力を効果的に伸ばす教育法の工夫」です。教化に関する研修会の計画が年8回予定されていましたが、生徒理解のための研修は一回もないという学力偏重の教育方針でした。こうした長期にわたる教育圧力は陰湿ないじめの温床をつくります。品川区が実施した「いじめ実態把握緊急アンケート」では3人の副校長のうち、誰一人としてアンケートの原本を見ておらず、数値のみを区教委に報告しています。このアンケートに自殺した少年は「困ったことがある」と答え、「いまは収まったが次にまた起こらないともかぎらない」と記述していますが、教員も見すごしています。多くの教員は「いじられキャラ」と軽く考えており、いじめの現場を見ても等閉視していました。  少年は小学校のときからいじめられており、中学校に入学してすぐにそのことを吹聴して歩く生徒がいました。4月下旬に赤ペンが紛失し、5月上旬にはシャープペンシルがバラバラに壊されていたことを担任に訴えていますが、担任は帰りの会で「誰がやったのか」と尋ねたうえで「人の物を勝手に使ったり壊したりしてはいけない」と全体に諭して指導したことにしています。この対応は教師がいじめに本気で取り組む姿勢がないことを周知徹底したのに等しく、5月中旬には「きもい」「うざい」など言葉の暴力にさらされるのを担任も耳にし、給食準備中に少年の机が隣と20cm近く離されることが日常化しています。オープンスペースの廊下では、ほかのクラスも加わって殴るけるなどの暴力をふるわれていました。2学期には清掃中、少年の机に直接触ることをいやがり、モップに引っ掛けて運ぶなどの行為が集団化していきます。少年をバイ菌扱いして「菌」をほかの子に移す遊びに女子生徒も加担していきます。自殺後のアンケートを見ると暴言などの実行者は28名(男子14人、女子14人)、言葉によるいじめや誹謗中傷行為については、クラスのほとんどの生徒が関わっています。そのほかに部活についても、4月、5月ごろからボールを顔面にぶつけられ、青あざをつくるなどに始まり、いやがらせ行為のターゲット的存在になっています。  クラスでも部活でもいじめられ、登校すれば心も体も傷つけられる少年は学校に居場所がなく、孤独と絶望のなかで生活していたと思います。少年はいじめの一部を親に訴え、親は担任に相談しています。しかし、学校はクラスや学年、部活へ拡大したいじめには無力です。燃え広がった火は消せないのです。当時、全国各地で子どもたちのいじめ自殺が報道されていましたが、親は学校へ行かせ続けながらいじめを解決しようと考えたのでしょうか。少年は学校へ行くのがつらいという言動を家で見せていたのではないかと思います。いじめで引き裂かれた魂が生きることを断念する前に「学校を休む権利」を親が知っていたら、わが子の命を救うことができたのではないかと思われ、残念でなりません。(内田良子)