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2010.05.01

第7回 小西剛史「隣る人」

春休みになり、ヒマを持てあましている中1の太郎(仮名)と小6の次郎(仮名)にゴルフの打ちっ放しへ連れて行く約束をしました。 自分の休みの日の午後に出かけることにしたのですが、その日の昼ごろ、家のほうからなにやら騒がしい物音が聞こえてきました。「誰か男の人来て~」という女性職員の声を聞き家に駆けつけると、太郎と次郎がつかみ合いのケンカをしており女性保育士が必死にそれを止めようとしていました。 とにかく二人を引き離してそれぞれの部屋へ連れて行き「しばらくここから出るな!」と言って二人の時間を切りました。夕方部屋へようすを見に行くと、な、な、なんと二人ともグースカと寝ていやがりました。 私は瞬間的に頭が沸騰して「お前ら何寝てんだ。俺の貴重な時間がお前らの喧嘩でパーになったんだぞ(バーディーじゃないんだぞ)。お前らのために予定をいれずに時間を空けておいたのに、よく寝ていられるな。俺の貴重な3時間、1時間当たり10万円、占めて30万円。どんな手を使ってもかまわないから17時までに用意しろ。それで許してやる!」と勢いあまってふっかけてしまいました。難題を押しつけられた二人は喧嘩をしたことも忘れ、協力するしかない状況になりました。 17時すぎ、二人は宿舎にいる私のところまで来るのですが扉の前でゴソゴソ相談しており、なかなか入ってきません。「そんなこと言ったら、こう言い返されるにきまってんじゃん。俺が小西さん役やるからお前ちょっと練習してみろよ」「えーいやだよ」などと丸聞こえ。 結局、10分くらい経ってからモジモジ入ってきた二人は「じぶんたちのためにじかんをとっておいてくれたのに、むだにしてごめんなさい」と異口同音に謝罪しました。 「俺がほしいのは謝罪じゃない、金だ金! 30万だ! それはどうした。30万あれば俺の気が済むんだ」と、もう少し意地悪を言ったあと、「些細なケンカから殺しあいになることもあるんだ。そうなったら人殺しだぞ。あとでどんなに後悔しても時間は戻せないんだ。それをわかってもらいたくて、お前たちに難題を突き付けたんだ。わかってくれたなら俺の貴重な時間はむだにならなかったことになるな。ケンカするなとは言わないけど、その結果に責任をとるつもりで覚悟してやりなさい」。 こう締めくくり、感情的に始まったこの騒動を、言い訳じみた後付けでなんとかまとめることができました。めでたしめでたし。 ※2010年4月15日 Fonte掲載