最新号トピックス

2010.04.15

第6回 小西剛史「隣る人」

 前号で前期試験不合格だった二人の中学生の結果をお伝えしなければならないでしょう。結果的には後期試験も不合格でした。今年からかなりシステムが変わったということもあり、レベルを落としても油断のできる状況ではありませんでした。そのため最後の砦ということで後期の合格発表前から私立高校への進学も視野にいれて手続きを進めてきました。  私立高校の試験日と中学校の卒業式が重なってしまったため、夕方二人きりの卒業式を校長室にて執り行なっていただきました。全教員が二人のために夕方まで残り、合唱をし、証書の授与を見守ってくださったとのことでした。結局二人は、光の子どもの家としては初めてとなる私立高校への入学を決めました。少なくとも最初に目指していた県立高校へ合格することができなかったということ、そしてその結果、仲間たちとの卒業式には出られずにさびしい思いをさせてしまったということは自身の責任として重く受けとめなければならないと感じました。唯一の救いは、切り替えの早い二人が新たなる生活に向けて前向きに準備を進めているということです。 「どんな高校へ行こうが、そこで自分がどうすごすかによってすべてが決まるんだ」という言葉は二度の不合格がなければ伝えなかった言葉かも知れません。  一方、来年度からそれぞれ大学、短大に進学することになった三人の高校生たちはそれぞれ新しい場所に生活拠点を移すことになり、もうすでに新しい生活を始めています。  そのうちの一人は4歳のときに光の子どもの家に来た女の子です。未婚の母の元で産まれ、さまざまな理由があり親と離れて暮らすことになりました。彼女が幼稚園のとき、母と祖母が暮らす家に家庭訪問をしました。「二度とその子を連れてこないでくれ」。こう言い放たれ、その後は年に一度の彼女の誕生日のときにだけ、義理のようにかかってくる一本の電話のみが唯一のつながりでした。そして十数年の歳月がすぎ、立派になった彼女を連れて昨年母宅へあいさつへ向かいました。もちろん門前払いを覚悟のうえで。ところが母、祖母とも大人になった彼女を温かい笑顔で迎えいれてくださったのです。心境の変化に何があったのか、ただ長い時間が解決したのか理由は分かりませんが関係は急速に修復され、これまで実現しなかった正月帰省などを経て来年度からの新生活は母宅でスタートを切ることになりました。多くの課題や不安を感じてはいますが、何よりも彼女が熱望していたことでもあります。われわれとしてはセーフティーネットの役割に徹し、あとは祈るのみです。 ※2010年4月1日 Fonte掲載