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2010.03.01

第4回 小西剛史「隣る人」

 わたしはお金をもらって子どもたちの養育をしています。要するにプロなわけです。プロと言うからには完璧が求められますし、失敗は許されません。しかし完璧な子育てとはどのようなものなのだろうか、また何が子育てにおける失敗なのだろうかといつも考えさせられます。  さまざまな研修を受けたり、日常のなかで感じる施設職員の陥りやすい課題として“よい子、できる子、すなおな子”を育てようとしすぎる傾向があります。結果的にそれは許容範囲の狭い対応になり、子どもの自発的行動を失わせ、大げさに言えば自立を妨げることにつながるとさえ感じます。私が考える自立とは、自分の意思で人生を切り開き、そこで直面する困難に耐えうる精神力を持つことです。  大人になるまでにいろいろなことに挑戦し冒険する必要があると思いますが、冒険することには当然危険が伴うものです。その危険を避けるために子どもを制限するということは、一見子どものためのような気がしますが、本当に大切なものを追究するのが真の養育者であるならばそれはもっともかんたんで手抜きの対応だと思います。もちろん命の危険にさらされるような場面では制限するべきですが、たいていの場合は許容範囲をできるだけ広げ、時にはいっしょに悪いことをしてしまうくらいの勢いが必要だと思います。  子どもたちは、大人から見て少々危険な遊びをしているときのほうが本当に真剣で満足そうな笑顔をしています。大切なことは無駄なリスクを軽減させたり、どれだけともに背負い伴走することができるかということなんだとつくづく感じさせられます。責任問題が念頭に来るとどうしても子どもにとってリスクが少なく失敗させないような対応をしがちですが、養育者は管理者になってはいけないのです。  子どもを育てる大人は自身の責任を問われることを恐れてはいけない、いっしょにリスクを背負ってくれた大人が責任を問われるようなとき、それを目の当たりにした子どもが深い絆を感じるならばもはやそれは失敗ではないのです。  子どもたちの自発的な挑戦を支え、立ち直れなくならない程度の失敗をさせることこそ、失敗が許されないわれわれ養育者の責任…。んー、わけが分からなくなってきた。いずれにしてもわれわれの働きの成果は子どもたちが巣立ってから分かるものだということでしょう。 ■光の子どもの家/1985年7月に設立された児童養護施設。現在36名が利用中。徹底して子どもに寄り添った養育方針が「隣る人」と呼ばれる新しい養育理念を生んだ。今年12月、「自立進学基金」を創設した。 ※2010年3月1日 Fonte掲載