最新号トピックス

2008.10.13

最終回「子どもの現在」 保坂展人

 早いもので最終回となってしまった。昨年は子どもが被害者となる事件が続き、年末から今年にかけては子どもも驚くような事件が起きている。  国会では「耐震偽装問題」に取り組んで、構造計算書の偽造という出来事が起きた構造(システム)を集中的に調べた。バブル崩壊後、建設業界が苦しくなりコストダウン競争が激しくなった結果、建物の生命線である柱や梁も細く弱くして安くあげるようになった。しかも、こうした業者たちは、いずれも「地震に強い建物」をつくることを宣伝している。  そして、ホリエモン逮捕。これには、ショックを受けた子どもたちも多いだろう。プロ野球や政治などジジむさい世界に若者の支持を得て「挑戦者」のヒーローだった。既成秩序を破って、大暴れする。「儲けるが勝ち」と平気で言える勝ち組男にあこがれた子どもたちにとって、今回の暗転直下・逮捕劇はどう見えただろうか。  いつの時代にも、詐欺事件や政界汚職などはあった。しかし、今のように小泉政権中枢を直撃するような事件は「ロッキード事件(1976年)」「リクルート事件(1989年)」以来の規模である。  昨日まで「勝ち組のお手本」としてテレビのバラエティ番組に出まくっていたホリエモンが「被疑者」として断罪される。たまたま、テレビも新聞も観ずに1週間すごしていた人は何が起きているか、にわかには理解できないだろう。  小泉構造改革は、強い者がさらに強く膨れ上がる欲望を正当化する社会をつくった。競争社会から一時降りたり、休んだり、ずっこけてケガをしたり、人間だからいろんなことがある。ところが、この間、目立ってきた風潮は「子どもを甘やかすな」「自己責任だ」「学校に行かないやつには税金を使うな」などの効率主義的(実はこれを新自由主義という)なものだった。  強いものが強くて何が悪い。弱いやつは努力が足りない、自己責任だと言って突っ走ってきた「勝ち組」がいったんレースからこけると、とんでもないことになる。何でもかんでも強引にパワーでやり遂げろという猛烈ぶりが、ホリエモンの原動力であり一種の魅力だったにちがいないが、「やっていいこと、やらないほうがいいこと」を見分けるバランス感覚と判断力もマヒしていったのか。  日本社会には、「パワー信仰」がある。一生懸命やる、一日も休まず、徹夜も辞さず……目指している方向がどうあれ、やっている仕事の中身がどうあれエライ! ということになる場合が多い。それに対して、「じっくり考える」「いいこと、悪いことを見きわめる」「自分が何をすべきか悩む」という態度は、ふんぎりがつかないとか、タルいとかと言われやすい。  じっくり悩むことこそ、私たちが人間である証拠。考えることをやめてパワーゲームに突入してしまっている人にも、そうした時間をもってほしい。私は政治の場で悩みながら、子どもの声を反映させていくつもりだ。また、お会いしましょう。 ※2006年2月1日 Fonte掲載 ■著者プロフィール (ほさか・のぶと)1955年生まれ。中学時代、創刊した新聞が校則違反とされ、内申書に記載された「政治・社会運動」を理由に、高校は不合格。16歳から「内申書裁判」を起こした。80年代より、学校問題のルポを次々と発表、教育ジャーナリストとして活躍。市民運動にも関わってきた。96年秋の総選挙で社民党東京比例区で当選。議員として追及したテーマは、学校・子どもの問題をはじめ、平和・環境問題、年金問題など多岐にわたる。「児童虐待防止法」の成立、チャイルドラインの実現にも奔走。2003年、総選挙で破れるも、現在、ジャーナリストとして活躍中。著書に『先生、涙をください!』(集英社)、『学校に行きたくない』(集英社)、『元気印青春論』(大和出版)、『いじめの光景』(集英社文庫)、『学校を救え!』(ジャパンタイムズ社)など多数。