最新号トピックス

2008.07.28

第1回「子どもの現在」 保坂展人

どんな書き出しでこの連載を始めようかと考えていたら、15歳の少年が逮捕されるという事件が起きてしまった。まずは、これを考えることにしたい。 6月20日、東京板橋区の建設会社の社員寮で起きた突然の爆発は、「15歳の少年の両親殺し」事件だった。父親と母親を殺した後で、部屋にオイルをまいて、ガス栓をひねり、電熱器をタイマーで作動させて爆発をさせたという手口だった。 やがてガスが充満した社員寮の一階は爆発し、火の手があがった。爆発事故か心中事件かと言われたが、どうやら現場にあった遺体はすでに殺されていたこともわかって、管理人夫婦の殺人事件となった。 そして、22日の朝、15歳の長男が草津温泉に投宿中のところを警視庁の捜査員に逮捕された。旅館側で少年の一人旅を不審に思って警察に通報したというが、今のところ「父にこき使われ、食事の準備や掃除など寮の仕事をやらされた。19日には『お前は俺より頭が悪い』と頭を押さえつけられた」と父への恨みを語っているが、母親に対しては「いつも死にたいと言っていたので殺した」と言うにとどまっている。しかし、母親への刺し傷も多数あり、この惨劇を生んだ少年の動機がどこにあったのかは、まだわからない。 少年は学校では目立たない子で、口数も少なかったという。周辺の生徒から警戒されていたり、何らかの前兆が認められたわけではないようだ。まだ、新聞やテレビの情報は断片的だし、重要なポイントが語られていない可能性もある。 両親を殺害して、ガス爆発を仕掛けて、草津温泉に泊まった少年は逃げ続けようとしていたのだろうか。 大金を持ち出して家を出たわけではないだろうから、いつか宿泊費も払えなくなるはずだ。いったい何が、少年の心を爆発させたのか。少年の心に不穏なガスが充満しだしたのはいつなのか。 私は昨年から、小学校6年生が同級生を殺害した事件の現場に何度か通い、『佐世保事件から私たちが考えたこと』(ジャパンマシニスト社)という一冊の本を制作した。新聞・テレビで溢れた情報を排除して、じっくりと街を歩いて話を聞き続けたものだ。ところが、あまりに多くの事件が同時多発的に起きるので、じっくりと事態を見極めるひとときもなく、次から次へと事件が続いている。 読者のみなさんは、どのように今回の事件を受けとめたのだろうか。紙面を通していっしょに考えてみたい。 ※2005年7月1日 Fonte掲載 ■著者プロフィール (ほさか・のぶと)1955年生まれ。中学時代、創刊した新聞が校則違反とされ、内申書に記載された「政治・社会運動」を理由に、高校は不合格。16歳から「内申書裁判」を起こした。80年代より、学校問題のルポを次々と発表、教育ジャーナリストとして活躍。市民運動にも関わってきた。96年秋の総選挙で社民党東京比例区で当選。議員として追及したテーマは、学校・子どもの問題をはじめ、平和・環境問題、年金問題など多岐にわたる。「児童虐待防止法」の成立、チャイルドラインの実現にも奔走。2003年、総選挙で破れるも、現在、ジャーナリストとして活躍中。著書に『先生、涙をください!』(集英社)、『学校に行きたくない』(集英社)、『元気印青春論』(大和出版)、『いじめの光景』(集英社文庫)、『学校を救え!』(ジャパンタイムズ社)など多数。