最新号トピックス

2008.06.30

第9回「親の気持ち 子の思い」 青木悦

愛知県岡崎市で11月20日朝、ホームレスの女性が内臓破裂などで殺される事件があった。周辺ではホームレスが襲われる事件が続いていたが、とうとう死者が出てしまった。そして12月19日、1カ月後に、14歳の少年が告白したと報道された。襲撃は数人で行なわれ、主犯格とされる28歳の男は逃げているとも報道された。 少年たちによるホームレスの襲撃は、東京でも千葉でも続いていて、新聞記事の扱いも小さいし、テレビではほとんどニュースとして扱われないことさえある。今から23年前、1983年に横浜市で少年たちが集団でホームレスを襲った事件が明るみに出たときは、少なくとも新聞の扱いは1面トップ、テレビニュースもトップでとりあげた。 逮捕された少年たちのことば、「人を殺すことはおもしろかった」「おれたちは地下街を掃除してやっただけ」「奴らはくさい。くさいことは許せない」などは大きく報道された。それはそのまま、そういうことを口にする少年たちの出現に対して、社会が受けた衝撃の大きさを示していた。その後の、数日間は、ニュースはこの「横浜浮浪者襲撃事件」一色であった。 23年前の横浜の事件と今回の岡崎の事件とのあいだには、ある変化が見える。それは横浜の事件では逮捕されたのは少年たちばかりなのに対し、岡崎の事件では“主犯”は成人の男と言われている。近年、少年事件といわれるもののなかに、成人に命令されて、あるいは引きずられて…というものが多くなっている。一般的に「少年犯罪増加」といわれるが、“主犯”ないし、“主犯格”はおとなであることが多く、そういう意味で見れば少年犯罪は増えているわけではない。 横浜の事件以外にも、ホームレスの人たちがおとなに襲われることはいくつも起きているが、83年のあの事件に関しては、おとなの命令者は確認されていない。10代の少年たちが、いわば「遊び」として、「何となく」やってしまったのが、大きな特徴となる事件で、そのことがまた当時のおとなたちにとって衝撃であった。 さらに大きなちがいは、今回の岡崎の事件では、犯人たちはホームレスの人の金を奪っているという。襲撃が目的というより金が目的だったとしたら、なぜ大金を持っているとは思えないホームレスの人を襲ったのか。そこに23年前とはまったく異なる姿を見いだすのである。 今回の事件の全容はまだわかっていないけれど、襲った側の人間(かならずしも少年だけではあるまい)と、襲われた側の人間が、私たちが想像する以上にちかいところにいたのではないかと私は思う。23年前のときは、襲った少年たちの口から、「ヤツらとオレたちはちがう」と言いたいような言葉が飛び出した。「クサイ」あいつらと同じように見られるのは許せなかったと、事件後私が出会った少年は言ったのである。相手と自分がちがうという差別感がその底に感じられた。しかし今、岡崎で起きている事件は、襲った側も同じような立場で、そのなかのより弱い人間を襲ったのであろう。底なしの格差拡大のなかで起きた事件だ。世の中、ますます悪くなっている。 ※Fonte2007年1月1日号掲載