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2008.05.26

第4回「親の気持ち 子の思い」 青木悦

今年の4月末ごろ、新聞各紙に少年犯罪が増えたという記事が載った。昨年、東京都板橋区で起きた15歳の少年による両親殺害事件、東京都町田市での16歳少年による女子高生殺害事件を取り上げ、「殺人増え67人に――昨年の少年犯罪統計」と見出しを立てた新聞もある。 忙しい生活の中で、新聞の見出しのみ読むという人もいる。これでは、少年による殺人事件は「増加している」と思いこんでしまう人もいるだろう。事実、少年による殺人事件は2004年には57件、2005年には67件だから、10件増えたということになる。それは、率にすれば大変な増加であるといえる。 しかし、少年による殺人事件の推移を見ていくと、98年には115件、99年には110件、00年には105件、01年99件とその後も減少を続けており、04年には98年の半数にまで減った。そして、昨年に10件増え、67件となったというのが事実なのである。 「この1年間で10件増えた」ということを言わずに、おどろおどろしい事件のようすとともに、「増えた」という文字のみ伝えられると、多くの人は不安とともに、「やっぱり子どもはおかしくなっている」と思い込む。テレビでは、この上に音、色、スピードが加わるから「このニュースって、本当?」とか「ちょっとオーバーじゃない?」などと考える暇もなく、「少年少女が荒れまくっている」(ある街の青少年健全育成会会長の言葉)と思ってしまうのも無理はない。 私はその会長さんに言った。「本当にそう思います? あなたのまわりの少年少女はみな、荒れていますか?」彼はちょっと考えていった。「幸い、私のまわりにいる子どもたちは、さほどの状態ではありません。みんなでがんばっていますから」(……本当?) それぞれのテレビ局や新聞社はひとつなのだが、いくつものテレビ局がほぼ同時に多くの事件のようすを映す。新聞もまた、同じように大きく扱うから、受け取る側はひとつの事件でも膨大な量のニュースを得てしまうことになる。そして、不安になる。「荒れまくっている少年少女」などどこにもいないのに、自分のまわり以外、つまり外の街にはたくさんいると思ってしまう。こういう報道のありようの中で、私が一番怖いと思うのは、まさにこの部分だ。 事実を知らされないことも怖いけれど、事実が身のまわりにないのに外にはあると思わされてしまうこと、それが一番怖い。外には恐ろしいことがあると思わされたとき、私たちはその不安に耐えられなくなって、内側の命令者の言うとおりに動いてしまうから。 いま、たくさんのメディアの洪水というなかで、本当のことがわからなくなっている。しかし、「本当のことを知らせないメディアが悪い」と言っているだけでは、先が見えなくなる。メディアの責任も大いにあるけれど、本当のことを知る努力を自分もしなければいけないと思う。 いま、私はテレビのニュースを観るとき、はじめの項目しか観ない。詳細は新聞で読む。落ち着いて知りたいから。追い立てられて、あおられて知りたくないのだ。 そして、疑ってばかりいる。「本当? 本当? 」とつぶやきながら読んでいる。自分もモノ書きなのに。 ※Fonte2006年10月15日号掲載