50カ所の「居場所」を追ったルポ  「居場所」とは何かを問う1冊

本書は「居場所」をテーマに、難民、多文化、性的少数者など、さまざまな社会問題の支援に関わる人やその当事者が集まる50カ所の「居場所」を取材したルポルタージュ。

 不登校やひきこもりなど、子ども若者に関する「居場所」も取りあげられており、神奈川県立田奈高校の図書室で開かれている「ぴっかりカフェ」もその一つ。地元で活動するNPO法人「パノラマ」が運営する「居場所」として週に1度、お昼と放課後に生徒たちがやってきて、無料のジュースを片手に思い思いの時間をすごすことができます。同団体代表理事の石井正宏さんによれば、学校内にカフェ形式の「居場所」をつくる動きは2012年に大阪市で始まり、現在では新潟や静岡など数十カ所あるとのこと。

 「居場所」について考えるとき、私はある不登校の子どもにインタビューしたことをいつも思い出します。その子の「居場所」となったのは、近所のカードショップでした。年上に交じって遊び、大好きなカードゲームについて共感し合える友だちができたことが、つぎの一歩を踏み出すきっかけになったと話してくれました。

 私が思うに、親の立場であれば、カードショップに足しげく通うより、塾で勉強してくれたほうが安心できるのではないでしょうか。しかし、子どもが安心を得たり、元気をためる場は、かならずしも親の思いと一致するとはかぎりません。

 本書にはさまざまな「居場所」に、さまざまな人たちがそれぞれの思いを持って集まるようすが書かれています。コロナにより「居場所」のありように変化が求められて、はや1年が経ちますが、本書に登場する人々の思いを読んでいると、「居場所」の重要性はもちろん、「居場所」に対する私たちの捉え方についても問いを投げてくれる1冊です。(編集局・小熊広宣)

『わたしの居場所』(税込2100円)
共同通信社取材班/03-5379-0307

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