「子どもと2年も話せてない」 学校へ行かない子の親の思い

 中学生のときに不登校をしたAさんの息子さんは、通信制高校に進学しました。Aさんが困っているのは、子どもと会話ができないことです。
 話しかけても、首を縦に振るか横に振るかで返事をします。もう2年くらい子どもの声を聞いていないと言うのです。

 相談機関に行くと「返事をする必要のない声かけをしてください」とアドバイスされました。「ご飯食べるよ、お風呂沸いたよ、今から出かけるけど〇時ごろ帰るからね」といった具合です。Aさんは「とにかく子どもと会話をしたいです。同じ家に住んでいて、声が聞けないなんて悲しすぎます」と例会で思いを打ち明けました。

 Bさんが「よくわかりますよ」とうなずきました。「うちの娘も、私たちが話しかけても返事をしてくれなかったです。声が出なくなったのかと思ったくらいです。でも、ネットゲームの人とはチャットで話します。それも、敬語で。笑ったりもしていました。それなのに、私たち親とはメールか筆談でした。言いたいことがあったら、家に居るのにメールで伝えたり、紙に書いてテーブルに置いたり。まあ、ほかの人とは会話ができているからいいかなあと思っていました」と笑顔で話しました。

 私が「そういえば、事件がありましたよね」と話を振ると、Bさんがエピソードを紹介してくれました。

困ったときには頼ってくれる

 夕飯を終えて、Bさん夫婦が居間でテレビを観ていたら、子どもが血相を変えて入ってきました。「どうしたの? 何があったの」と聞くと「ゴキブリ」と書いた紙を差し出したというのです。お父さんが子どもの部屋に行き、ゴキブリを退治して一件落着。困ったときは、ちゃんと親を頼ってくれることがわかってうれしかったそうです。

 Aさんが「子どもが話をしないことを受けいれているんですか。さみしくないですか」と聞きました。

 Bさんは「高校生のときに不登校になったんだけど、あのときの私たちはひどい親でした。息をするのが精いっぱいだった子どもに向かって、学校のことや将来のことを言い続けて追い詰めてしまいました。子どもの顔から表情がなくなってしまい、やっとまちがっていることに気づきました。あのときの子どもを思い出すと、生きているからよいかなあって思えます」と静かに語りました。

 表情がなくなってしまった子どもの状況が焼きついているBさんだから、ネットゲームを笑顔で楽しめていることがうれしいのでしょう。

 「いったいどうしたらよいんでしょうか」とたずねるAさんに、私は「子どもに思いを伝えてもよいし、伝えなくて今の関係を大事にしてもよいと思います。答えはひとつとはかぎりませんから。来月、またお話を聞かせてください」と伝えました。Aさんの答えをいっしょに考えていこうと思います。(加嶋文哉)

【プロフィール】
(かしま・ふみや)
1959年生まれ。小学校教諭を32年間勤め、在職中だった1994年に「星の会」(不登校を考える親の会)を設立。

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