
今回はフリースクール・りんごの木に通う小塩成美さんに執筆していただいた。今年からりんごの木に通い始めた小塩さんは、先日行なわれた「フリースクールカムカムフェスティバル」の子どもシンポジウムにおいて、シンポジストもつとめられた。不登校のきっかけや昨今のいじめ問題など、編集部からの質問にお答えいただいた。
――不登校のきっかけは何ですか?
私が学校に行かなくなったのは、小学校1年生1学期からです。となりの席の男の子にいじめられたことがきっかけでした。いま思えば、「いじめ」というより、からかいだったというか。軽いイタズラ程度のことだったと思いますが、あのころの私は、とてもつらく感じていました。
友だちや先生にこのことを話し、まわりの手伝いもあって、その男の子にからかわれることはなくなったんですが、逆に今度はその男の子があっという間に悪者になってしまったんですね。クラスのみんなだけではなく、先生までもがその男の子のことを「悪」としてみていて。「いじめ」が云々というよりも、そういう「一方的に決めつける雰囲気」というものが非常にイヤで、学校がだんだん嫌いになってしまったんです。その後は学校ではなく、家を中心に過ごすようになりました。学校に行きたくないと言ったとき、私の親はすんなり認めてくれました。「行きたくない」と言っても、その後しばらくは学校に行ってたんですけど、だんだんと行きたくなくなってきて、「もう絶対に行きたくない」と言ったときに、家族会議を開いて両親と相談し、「どうしても行きたくない」ということを認めてもらいました。
◎家も好き居場所もいい
――家のなかではどのように過ごしていましたか?
学校に行かなくなってからずっと家で生活していたんですが、行かなくなってすぐはヒマでしょうがなくて。やることはいろいろあったんだけれども、やる気になれなくて、毎日「ヒマ」「つまらない」って、連呼していました。それからしばらくして、ゲームに出会ってしまったんです。毎日、何時間もやり続けるときもありました。
しばらくして、母から「ホームシューレ」の存在を聞かされました。もともと、絵を描いたり、文章を書くことは好きだったので、ホームシューレで出会った友だちに手紙を書いたり、「ばる~ん」へ投稿したり。いまも「ホームシューレ」にはお世話になっていますね。
ほかには、ピアノを弾いたり裁縫をしたりというように、わが家を中心に過ごしていて、あまり外出することはありませんでした。インドア派なのかな(笑)。
7歳から不登校になって、今年からフリースクールに通うようになったので、合計で10年近く、家を中心に過ごしていましたね。
――「りんごの木」に通うきっかけは何ですか?
2005年に栃木で行なわれたフリースクール全国交流合宿へ参加したとき、私の弟が「りんごの木」のみなさんに大変お世話になって。家から近いということもあって、その後に弟が通いはじめたんですが、私は人と付き合うのがまだ苦手でしたし、抵抗があったんです。
そんなとき、月に1回プロの漫画家を講師に招いて「マンガ講座」というものがあって、興味を持ったんです。そこで、月に1回だけ参加するようになったんですが、今年8月、千葉の房総半島を電車でぐるりとまわる企画に参加した際の帰り道、話をしているうちに私も通うことになり……「兄弟で入会すると会費が安くなる」という言葉に母がつられてしまったいうかこともあって(笑)。
だいぶ慣れてきたし、弟もいるしなと思い、行くことに決めたんです。
「りんごの木」のいいところは、雰囲気や年齢制限に関係なく、いろいろな人とおしゃべりができるところですね。すごく明るい雰囲気の場所で、すごいおもしろい人がたくさん集まっているんですね。家でのほほんとしているのも好きなんですけど、そういう場所でいろんな人とおしゃべりをするということも非常に楽しいですね。
いまは、月曜日と木曜日にある「ひるめし大作戦!」(みんなでお昼ご飯をつくって食べる企画)やバンドに参加したり。ほかには、イラストを描いたりインターネットでホームページをつくったりもしていますね。「表現すること」が好きですね。
◎死を選ぶ前の選択肢
――シンポジウムでいじめ問題にふれていましたが。
まず、「いじめ」から逃げたいという気持ちだけで死を選ばないでほしい。死にたい、つらいという感情はすごくわかる。 でも、あなたが死ねば、あなたがいままで受けてきたつらい気持ちと、あなたの死という悲しみを、あなたを大切に思っている人が背負うことになる、ということを知ってほしいのです。
命はそんなに軽いものじゃない! 死を選ぶ前に、「学校に行かない」という選択肢があるということを、もっとたくさんの人に知ってもらいたい。居場所だって、たくさんあるんだから。
本当につらかったとき、私を支えてくれたのは家族みんなです。そして、ゲームや音楽や絵など自分の好きなことです。何かつらいことがあったら、休んで、好きなことをして力を蓄え、またゆっくりと歩き出す。そのことが大事なんじゃないでしょうか。そこから少しずつ将来のことを考えていけばよいとと思います。最近、私もそろそろ仕事について考えなくちゃなと思っています。
でも、好きなことと仕事は別にしたいと考えています。好きなことを仕事にしてしまうと、それに追われてしまって、好きなことを本当に楽しめないと思う。
なので、趣味は趣味として楽しんで、仕事は自分が本当に納得できることを探したいなぁと思います。胃が痛くならなさそうなものを(笑)。
――不登校の子どもや親に伝えたいことは?
変なたとえなんですけど、子どもは「旅人」で、親は「大きな木」のようなものだと思います。太陽の暑さや歩き疲れたときには、「大きな木」のような親に寄りかかって、木陰でゆっくり休む。疲れがとれたらまた自分で歩き出す……。
「旅人」である子どもにとって、親はそうした「大きな木」のような存在でいてほしいと思います。私の両親や家族がそうであったように。
※Fonte 2006年12月15日号掲載
※年齢は取材当時


