連日、虐待の報道がされています。身近な人から虐待を受けていると相談された場合、どのように対応したらいいのでしょうか?

◎ 虐待は子どもの視点に立ったネットワークを

 ある公立高校の女子生徒は、小さいころから母親に家庭で包丁を突きつけられる、物を投げつけるなど暴力、暴言、食事抜きなどの罰を受けていました。そのことを児童相談所などにも相談したのですが、対応してもらえず、結局は、学級担任が母親に「子どもを大事にして」と言うだけに止まりました。しかし、その母親は、夏休み中、退学届けを出してしまったのです。

 まず女子生徒の訴えは「児童虐待の防止等に関する法律」の虐待にあたります。身体的虐待、心理的虐待で子どもの成長発達を妨げるものです。食事抜きの罰も著しい減食という養育放棄(ネグレクト)にあたります。

 このような虐待行為は虐待する親に心理的、人格的問題があり、子どもといい関係を持つことができません。その背景には、親自身もつらい環境で育ち、傷ついているということが多くあります。したがって、担任が親に「子どもを大事にして」と忠告しても改善されることは通常ありません。かえって親子を追い詰めて虐待がひどくなることもありえます。

 このような場合、児童相談所に通報、相談するのが適切な対応です。児童相談所は、虐待を解決するまで子どもを守るために必要だと認めれば、一時保護の措置をとります。子どもと親の距離をとらせ、子どもの安心を保障して回復させ、親に対しても時間をかけて働きかけます。子どもの通学を保障するためには、子どもを児童養護施設や里親に委託します。その場合は学校との連携も大切です。親権者がその措置に反対する場合には、児童相談所所長は家庭裁判所に児童養護施設入所や里親委託の承認の審判を求めます。

 しかし、このケースの児童相談所の対応はまちがいで、児童虐待防止法に違反しています。このような対応で困ったときには、子どもの人権問題を扱う弁護士に相談してください。弁護士が関係機関に働きかけをして援助します。「家出」も周囲の適切な援助がないときに子どもなりに自分を守る方法です。子どもの視点に立った解決方法を考えるべきです。

 このケースの退学届は子どもの意思を無視したもので、母親の親権の濫用ですから無効です。弁護士に相談して学校、教委と話し合って復学を認めてもらうことができるでしょう。(多田元・弁護士)

※Fonte 2006年11月1日号掲載