2000年代、最初の10年間が過ぎた。西鉄バスジャック事件などの少年事件、瞬く間に広がった発達障害、協力者会議以降の「登校圧力の揺り戻し」、同時多発テロ、ネット・携帯の普及など、本当にさまざまなことが起きた。00年代は子ども・若者にとってどんな時代だったのだろうか。5名に執筆いただいた。
11年1月特集-00年代は子どもにとって…
記事リスト
- ■ 00年代と不登校 奥地圭子
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いじめ・不登校の状況は、教育とりわけ学校教育のストレス度と密接に関係がある。それも一人ひとりの個性や状況が大事にされ、最善の利益に立つ制度や関わり方が求められる必要があった。
- ■ 00年代とひきこもり 芹沢俊介
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「社会的ひきこもり」論から「存在論的ひきこもり」論への転換がこの問題に関して私が自分に課した緊急のテーマになっている。
- ■ 00年代と発達という「病」 浜田寿美男
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人の出発点は、みな一個の受精卵である。そこからはじまって、母の胎内で育ち、未熟な新生児としてこの世に生み出され、さらに20年ほどの年月を経て、次の世代を生み出していける身体になって、ようやく生き物として一応の完成に達する。この過程を「発達」というのなら、それはまさに人の成り立ちとして不可欠のものであり、これを抜きには人間の問題を論じられない。その意味で心理学において「発達」の研究が大きな位置を占めるのは当然であるし、だからこそ私も長い間この世界と付き合ってきた。しかし、近ごろの「発達」ばやりには、私自身、へきえきしていて、およそついていけない気分でいる。
- ■ 00年代と少年事件 吉岡忍
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少年事件の容疑者が逮捕されると、とっさに19歳だった私自身を思い出す。薄暗い部屋で写真を撮られ、10本の指すべての指紋を採取され、下着1枚になって身長や体重を測られたあと、机ひとつの取調室で、ごつい体格の無愛想な刑事と向き合った。
- ■ 00年代と若者の労働 生田武志
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2001年ごろ、日本の野宿問題は一つのピークに来た。98年の不況以来増え続けた野宿者がこの時期、全国で約3万人に達したのだ。野宿、貧困への対策は、この時期以降「ホームレス自立支援法」の制定など大きな転換を始める。そして、このころから「ニート」や「ひきこもり」という貧困にも関わる若者層の問題が大きく浮上した。さらにその後、「ワーキングプア」「日雇い派遣」「ネットカフェ難民」「派遣切り」「子どもの貧困」などがそれこそ半年交替のように次々と浮上し始めた。日本の風景は一変したかのようだ。