「共通テスト」が全国で行なわれている。しかし、「共通テスト」には、誰が見てもおかしいことがある。解答用紙が返却されないのである。
 テスト結果については、とても詳細な報告が個々人に配られる。そこで学校の平均、区の平均と比べて自分が上か下かが判定されるのだ。しかし、解答用紙に子どもが書いた「解答」が返されないで、「どこがどうしてまちがったか」が明らかになるだろうか。ひどい場合、問題用紙まで回収される。なおさら、事後の指導ができない。
 このことを区教育委員会の指導主事に質問したところ、「共通テストを実施している業者から許可が出ないから」という返事だった。つまりテスト内容は、「業界のヒミツ」というわけだ。業者の利益擁護が最優先されているのかと愕然とした記憶がある。

すべての子どもは調査できない

 06年4月、共通テストを実施する際、東京都足立区である校長が「障害」のある子どもを親の了解なしに外したという問題が起きた。僕は変な言い方だなあと思った。特別支援学級や養護学校の子どもたちはすべて「共通テスト」の対象になっていないのはどう考えるのか。
 全国共通テスト第1位の秋田県教育委員会教育長の根岸均氏は、「(全員が対象に調査されるので)子どもが属する集団の傾向だけでなく、子ども一人ひとりのようすまで把握できる」と発言している。しかし、現実はそうではない。「全員を対象とした共通テストだから当然」という空気が、とてもおかしい。だって、全員を対象としていないのだから。
 僕が今やっている塾「じゃがいもじゅく」では、お子さんの成績の証明として通知表でなく共通テストの結果を持ってきた保護者がいる。「じゃがいもじゅく」に通うのに、成績証明は必要がないにもかかわらずである。保護者は解答用紙が返ってこないのに、平均より上か下かの数値を最大の根拠に喜んだり落ち込んだりしている。僕はまず、「共通テスト」の結果にふりまわされちゃいけないと言いたい。
 僕は、テストはあっていいと思う。でもそれは、「試されるべき中身」を問題にすることで初めて意味があるのだ。そのようなテストならば、結果は保護者はもちろん、子どもにも納得させうるものになるのである。そう考えると、全国共通のテストなど不可能である。子どもの力は、「千差万別」である。その子どもたち全員を対象にしたテストなどできるわけがない。
 では、共通テストの目的は一体何なのだろうか。このことを文科省や教育委員会のおえらい方にぜひお聞きしたいところだが、答えは容易に予測できる。それは「全員を調査するため」。しかし全員は調査していないし、全員を調査することなどそもそも不可能なのだ。

(湯本雅典・ゆもとまさのり)1954年生まれ。80~06年まで東京都公立小学校教員。51歳で中途・自主退職。現在は、自営業の傍ら、私塾「じゃがいもじゅく」の運営、自主制作映画つくりをすすめている。

2008年11月15日 Fonte掲載