マギーさん

お正月号の特別インタビューは、マジシャンのマギー司郎さん。子ども編集部のメンバーが、マギーさんに子ども時代の思い出や「おしゃべりマジックスタイル」の誕生秘話などをお聞きした。

――どんな子ども時代を過ごしていましたか?
 僕は生まれつき左目が斜視でほとんど見えなかった。勉強もできなかったし、運動も全然。いつも端っこにいるような子だったんだよね~。
 唯一、得意だったのが知恵の輪。小学3年生のころ、こっそりお金を貯めて、知恵の輪を買ったの。知恵の輪には説明書がついてるでしょ。それを見て練習すれば、誰でもスイスイできるようになる。みんなの前で知恵の輪を解いて「司郎ちゃん、すごい」って言われる時間が、唯一自分の時間だった。あれがあったから、イヤな学校時代も乗りきれたんだと思う。
 ただ、家が貧しかったから、知恵の輪なんか見つかったら、親に「返してきなさい」って怒られるだろう、と思ってた。だから隠してたのに、ある日、見つかっちゃったんだよね。そしたら、不思議なもんで母親は何も言わなかったんだ。本能だけで生きてたような母だから、わかってたんじゃないかな。これは大事なもんだって。
ちがいが大切
なんだよね~
――子ども時代は苦労されたんですね。
 子どものころだけじゃなくて、大人になってからも、僕は人とちがうところだらけだったの。そのちがいが、悪いことでも、自分にとってはプラスなことが多かった。僕は斜視だったから、初対面の人と話すのが苦手だったの。まともに初対面の人と話せるようになったのは58歳を過ぎてからかな。いま62歳だから、つい最近のこと(笑)。それもあって、長く芸能界にいるのに、友だちは3人ぐらい(笑)。でも、それでもいいんだよね。
 僕の芯の部分にある「弱い部分」は、治らないの。仕事を受けても、いつも「本当にできるかな」って心配になるし、なかなか強くはなれない。でも、それはそれでいいの。弱さと優しさって、見分けがつかないものだから。
 頭がよくて、なんでもできる人には、できない人の苦労がわからない。そういう「強さ」よりも、弱さのほうが大事かもしれない。弱くて、キツイ経験が、人を優しくするんだと思う。

――いまの「おしゃべりマジック」のスタイルになった理由は?
 正直に言って僕は手品がヘタなの(笑)。舞台に上がったら、できるよ。だって、できるものだけ選んでるからね。それに僕だって、頼まれれば「かっこいいイリュージョン」みたいなこともやる。でも、不思議なのは「イリュージョン」をやったら、その業者さんからは、二度と仕事が頼まれないってこと(笑)。僕は手品がヘタだけど、こんな手品も貴重なんだよね~。
本能を信じて
いいんだよね~
 手品って見せられ続けると、タネがわからないからイライラすることもあると思うんだ。僕の手品は、タネをすぐバラしちゃう。いくつかバラさないで手品をすることもあるけど、バレてもいいの。タネ明かしをすると、なんかホッとするでしょ。「なーんだ、この人はすごくないんだ」って思えるんだろうね。僕はこの年になって思うんだけど、すごい人もダメな人もいない。みんな、プラスマイナスゼロなの。「すごい人なんていないんだ」っていう思いが、いまの手品のスタイルにつながったんだろうね。

――お弟子さんとの関係はどうですか?
 僕は弟子とか、師匠とかっていう関係をまったく意識しないの。舞台に立てば、もちろん五分の立場だけど、舞台を降りても立場は同じ。
 たしかに、僕のほうがたくさん舞台に立って、弟子はちょっとしか舞台に立たないことのほうが多いよ。でもそのぶん、僕のほうが給料をたくさんもらってる。お金を受け取った時点で、舞台上のことはチャラだよ。あとは人間どうしの付き合いしか残らない。
 以前、突然、姿を消した弟子がいたの。でも人間だから、そういうときもあるよね。その彼も、いまは戻ってきて、いっしょに手品師をしている。「一度、逃げ出したヤツは許さない」って言う人がいるけど、手品がきつければやめてもいいんだよ。生きてく方法はなんだっていいんだから。

――最後に一言。

 僕は手品がなかったら、どうなってたかわからない。でも、手品と出会えた。これは偶然じゃないと思ってる。出会うようになってたと思うの、絶対。頭じゃなくて、本能を信じて生きていれば、好きなものをちょっとずつ選べると思うんだ。そうやって好きなものを選べば、自分の居場所に行き着くと思うんだよね。
時間が解決
するんだよね~
 だから、あんまり「自分がイヤだな」って思うことは、がんばらなくてもいいと思う。学校も同じだろうね。だって、本当に正しいことなんてわからないでしょ。自分が一番ラクな道を選べばいいの。誰もダメになろうとしていないんだから。
 それと時間を楽しみながら、ゆっくりゆっくり自分を育てるっていう感覚も大事だよね。今日はダメでも、明日や来年には、状況が変わるかもしれないでしょ。人生って、いつでも想像がつかないことが起きるからね。
 生きてれば、いろんなことがあると思うけど、だいたいのことは時間が解決してくれるって思ったほうがいいよ。
 生きてればなんだっていいんだよね~。
――ありがとうございました。(聞き手・子ども編集部)

マギー司郎(まぎーしろう)
1946年栃木県生まれ。20歳からマジシャンとして活動開始。33歳のときのテレビ出演を機に広い層から人気を得た。現在、マギー審司さんほか、9人の弟子を持つ。

Fonte2008年1月1日号 233号掲載