
――なぜイラクに?
いま爆弾を落とすという状況が急に来て、だけど私たちは爆弾を落とされる側のことを何も知らない。世界の人たちがいっぱいそこに行っているので、そのひとりになって少しでも戦争の抑止力にという、そんな気持ちで行きました。インターネットで調べて、イラク国際市民調査団に参加して行けることがわかったのです。高校生、大学生、市民、ジャーナリスト、公務員もいました。弁護士は私だけ。弁護士をもっと連れて行くべきだった(笑)。
◎治って退院する子はいない
――イラクのどういうところを見ましたか?
バグダッド、バビロン、バスラの南のクウェートのあたり、劣化ウラン弾によるガン多発地域。幼稚園、学校訪問と、病院はバグダッドでひとつ、バスラで二つ見ました。小児病棟で、全部ガン病棟です。バグダッドの「サダム子ども病院」は、難病の子を全国から集める病院だけど、結果的にいまはガンの子ばかり。白血病棟を新たにつくって、白血病その他のガンの子どもで満杯という感じでした。
経済制裁は医療品には及んでいないと信じていたのですが、放射線治療はできない、科学治療も止血剤にいたっても制限されていることが行ってはじめてわかりました。
――子どもたちを見て印象に残ったことは?
もう涙ばかりで。バグダッドの病院だと、ガン病棟には毎日2人入ってきて2人出ていくみたいなペースだそうです。治って出ていく子なんかいない。死ぬか、とりあえず薬がないから出ていく。クルド人の女の子は、お父さんが布で押さえていてもすぐ出血で真っ赤になる。日本では止血剤1本うつだけですぐ止まるのに。そんな状態でグッタリしている子が多い。写真の子なんかは例外で、お医者さんになりたいと言っていました。隣のベッドの子は骨ガンで足を1本切断したばかりで、足がなくなったのは悲しいけれど、悪いところがなくなったので治ったら早く学校に戻りたい、先生になりたいと言うんですね。お医者さんは、おそらく転移をしているので難しいかもしれないと。そんな話を聞いたらそこにいられない。そんなことの連続でした。
◎こんなひどいことが当たり前に
私は第一日赤の白血病棟に行ったことがあるんですけど、同じ白血病棟でもこれだけちがうのかと思いましたね。医師が、子どもの白血病はスイスだと9割治ると言ったかな。だけどここでは、8割が死にます。クルド人の女の子のお父さんが、イラクの実態が世界に全然報道されないから、あなたたちが世界中の人に言ってくれと発言をしたら、別の子のお母さんが「そんなこと言って知ってもらっても、やっぱりここにいる子は全員死ぬわ」と言ったんですね。こんなひどいことがこの世界で当たり前のように行なわれていることが、すごい衝撃でしたね。
――幼稚園とか学校を訪ねて感じたことは?
幼稚園には上流階級の子がいました。その人たちは、サダムがどうであれ、やはり英語が通用するようにしないといけないと思っている。反米の嵐が吹いているようでも。
教材はあるにはあるんですけど、何回も使い古している。鉛筆が規制されているので足りない。世界地図とかイラクの地図は発泡スチロールの箱の蓋にマジックで描いてかけてあるんです。アフガニスタンを取材していたジャーナリストといっしょに行ったんですけど、それほど教材が不足していても、アフガニスタンに比べたら天と地ほどちがって豊かだと言っていました。
――ほかに感じられたことは?
日本の評判が本当にいいんです。イラク人をバカにしないで建物や施設をつくってくれた、と。街を走っているのは半分以上日本車です。20年前のカローラをそのまま使っている。いろんなところから部品を代用して使って動かす技能、創意工夫をしているところは、かつての日本人的だなと思いました。
いろんなところで学生から、日本は原爆を落とされて焼け野原になったけれども、「戦争をしないことに決めた国」ということを言われました。「ヒロシマ」を知ってるんですね。大阪も名古屋も京都も知らないで、知ってるのは東京と広島なんですね。いっしょに行った広島のパン屋のおばちゃんで、私と年も同じくらいで仲がいいんだけど、彼女が「カム・フロム・ヒロシマ」というとみんなワーッと寄って来て(笑)。自分たちには湾岸戦争が終わってからもずっと上から爆弾が降ってくると言うんです。日本人に対する期待はすごくあると思いました。
アメリカの攻撃を日本政府が支持したけれども、日本の国民の8割は反対だと話をしたら「わかってるよ」と学生は言ってましたね。
あの街に爆弾が一つ落ちれば、埋もれて死んだこともわからない子どもがいることを想像してほしいと思います。湾岸戦争のあとも精神障害になって作業所で生活している人がいます。だから爆撃がおさまれば精神も元に戻るというような、そんな簡単なものではないと思います。
――読者に一言。
今回のイラク攻撃では、日本はイージス艦を出しました。戦争に一歩進んだわけです。これからさらにもう一歩進むのか。平和ボケと言われても、こんなイラクの状態を見てきたら、平和がいちばんだよねと思います。せっかく日本人は平和を大事にする人たちだとイラクで言われているのですから、もう一度そのイメージのところに戻そうと、とくに若い人たちに言いたいですね。
劣化ウランの問題でも、自分の国で管理するにはお金がかかり、邪魔なんで、爆弾にしてばらまけば、アメリカはいいかもしれないけれど、ばらまかれたところには汚染が広がります。アメリカのすごい大型消費型社会が劣化ウランを産み出さなきゃいけないようなシステムになっているのですが、日本もアメリカから濃縮ウランを買っていますよね。私たちが日々使う電気もこの問題と全然無関係ではないということも意識してほしい。
――お忙しいなか、ありがとうございました。
※2007年7月1日 不登校新聞掲載


