文科省は教師が子どもに対する体罰について基準を示す通知を出したと報道されました。これにより、どんな影響が出ると思われますか?
◎ 体罰肯定をさらに広げるおそれ
文科省は今年2月5日「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について(通知)」を出し、そのなかで「児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方」を示しました。
学校教育法11条では、いかなる理由があろうとも教師が児童生徒に体罰を行なうことを禁ずると明記されています
体罰とは、殴る、蹴るのほか、長時間正座や直立の姿勢を強制すること、放課後教室に居残りをさせてトイレや食事もさせないなど、肉体的・精神的苦痛を与えることです。
ここで問題なのは、その「考え方」が、教員の児童生徒に対する懲戒が体罰かどうかは諸条件を総合的に考えて個別に判断し、「児童生徒や保護者の主観的な言動」によって判断せず、「客観的に」判断するべきであるという点である。
そして、体罰の違法性を否定した二つの判例(東京高裁昭和56年4月1日判決・浦和地裁昭和60年2月22日判決)を引用しています。
東京高裁判決は「水戸五中事件」という有名な体罰事件です。
中学校2年生の男子(13歳)が女性教師に頭を殴られて8日後に脳内出血で死亡しました。当人は親にも先生に殴られたことを話さず、死後の解剖もされなかったので死因不明とされましたが、一審は級友たちの証言をもとに教師が当人のふざけを怒って頭を殴ったと認定、暴行罪で有罪としました。
しかし、東京高裁は、教師側の証言を採用、軽く頭を数回たたいた程度で「口頭の訓戒・叱責と同一視してよい程度」と認定し、「正当な懲戒権として許される限度内」とみなし無罪としたのです。子どもの証言は無視されました。文科省の「考え方」が児童生徒の主観的な言動で判断せずということに通じます。
浦和地裁判決は、自習中に席を離れた中学2年生の頭を教師がボール紙製の出席簿で1回殴った行為が「口頭注意」と同じとして適法とした判決です。
これらの判決は、教員の暴力を肯定するものと批判され、判断の公正さにも「問題がある」とされた判例ですが、この二つの判例を文科省が「正しいもの」として引用しているのには驚きます。
学校には体罰という名の暴力が根強く残っている現状があり、文科省通知はその暴力肯定をさらに広げることでしょう。
国連子どもの権利委員会は、「体罰その他品位を傷つける罰」から子どもを保護することを求めています。しかし、文科省は、教員が言葉などによって子どもの心を傷つける問題には何ら触れていません。この点もいまだに不十分であると言わなければなりません。
※Fonte2007年3月1日号掲載


