入所者への暴力や監禁などが連日報道された「丹波ナチュラルスクール事件」を受け、登校拒否・不登校を考える全国ネットワークとフリースクール全国ネットワーク、関西圏のフリースクール関連団体が緊急アピールを採択した。両アピールは、いずれも施設で起きた暴力を批判するとともに、丹波ナチュラルスクールが「フリースクール」と報道されたことへの疑問を呈した。

 9月23日、大阪市のフリースクール・フォロで丹波ナチュラルスクール事件を考える緊急集会が開かれた。関西圏のフリースクールや不登校・ひきこもりに関わる団体・個人など40名が参加。事件についての思いを語った。
 まず、丹波ナチュラルスクールで暴力や人権侵害が常態化していたことについては、「暴力によって効果があるように見えたとしても、それは従順にさせているだけ」「事件は氷山の一角で、さまざまな施設で子どもの意志を無視した暴力が、矯正・訓練という名目のもとに行なわれている」「事件ほど極端ではないにせよ、豊かな自然のなかで不登校やひきこもりを治すという通念は、かなり広く共有されてしまっているのではないか」など、さまざまな声があがった。
 ひきこもる若者の支援などをしている情報センターISISの山田孝明さんは「自分たちは京都で38団体のネットワークを組んでいるが、丹波ナチュラルスクールを誰も知らなかった。京都府外から当事者を連れてきて、まったく横のつながりもない閉鎖的な状態で活動していた。閉鎖的に活動していたら、独善に陥る危険は私にもある」と話した。
 また、親について「どうして判断をぜんぶあずけてしまうのか、必要なのは子どもと向き合うことなのに」といった声がある一方で、「子どもとの関係がしんどくなったとき、距離をおかないと、どうにもならないときもある。しかし、子どもを引き出したり、あずけるのは暴力になる。自分が避難できる場があれば」などの声もあった。
 また、報道のあり方への疑問の声も多かった。丹波ナチュラルスクールは「フリースクール」と報道されたが、多くのフリースクールは子どもの意志を尊重することを根本理念としている。報道によって矯正施設と混同されることを懸念する声や、周囲から心配や不審の声が寄せられたなどの報告もあった。しかし、「これが正しいフリースクール」というような論議は、かえって管理監督の強化を呼ぶのではないかとの懸念も示された。

◎ 意志に反した収容は違法

 集会の後半では、自分の意志に反して自立支援施設に収容された経験を持つリナさん(仮名・18歳)が経験を語った。リナさんは、どんなにイヤだと話しても「おまえはここでがんばるしかない」とくり返され、自分のことを否定され続けるなかで、自分への自信を失い、自分のほうがおかしいのか、と思えてきたという。そうしたなか、心の底から死にたいと思うようにまでなる。リナさんは何度も脱出を試みて、4度目で脱出に成功し、施設との関係を絶つこともできた。しかし、居住先など今後についてはいまだ定まっていない。リナさんは施設での処遇について「肉体的な暴力はなくても、私にとっては暴力だった」と話す。また、親については「学校に行っているからとか、何かしているからではなくて、何もしていなくても私が生きているということを認めてほしい」と話した。
 集会では、「不登校やひきこもり当事者へのいっさいの暴力・人権侵害を許さない」「本人の意思を無視した施設収容は違法行為である」などを訴えたアピールが採択された。アピールはフリースクール・フォロのホームページなどで閲覧可能。
 一方、フリースクール全国ネットワーク、登校拒否・不登校を考える全国ネットワークが緊急アピールを採択。丹波ナチュラルスクールに対し「これは教育ではなく犯罪であり、入所者が暴力で支配する収容所。フリースクールとは対極の存在にある」と厳しく批判。報道のあり方にも疑問を呈した。またフリースクールは法的な位置づけがない、という指摘に対して「規制ではなく連携を進めていくことで人権侵害が防げる」との見解を示した。
 多くの報道では「フリースクール『丹波ナチュラルスクール』」と報じている。しかし、丹波ナチュラルスクールのHP(現在は閉鎖)では、当団体がフリースクールだという記述はない。事件を発表した京都府警は、事件発生直後から丹波ナチュラルスクールを「私設更生施設」としか位置づけていなかった。本紙取材に対しても「当団体がフリースクールだという認識はない」と答えている。
 ほとんどの報道機関が、第一報から「フリースクール」という位置づけで報道しているが、どの段階で「私設更生施設」から「フリースクール」へと変わったのか、疑問が残る。京都府警記者クラブの共同通信社の記者は「たしかに警察発表では『私設更生施設』でしたが、私どもの社では更生施設というより入所型フリースクールである、と判断しました。これは各紙の判断で、記者クラブ内で相談したと言うことはありません」と話している。