厚生労働省の調査研究班(代表/齊藤万比古・国立国際医療センター国府台病院)が、ひきこもり支援にあたる専門機関の職員などに向けた「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」をとりまとめた。

 今回発表された「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)は、07年から09年にかけて行なわれたひきこもりの背景にある精神障害の実態調査がもとになっている。
 本調査は全国5カ所の精神保健福祉センターにおいて、ひきこもりの相談に訪れた当事者184人(16歳~35歳)を対象に精神科診断を行なったもの。
 調査結果によると、なんらかの精神障害を有していると診断されたのは149人。分類不可とされた1名をのぞき、【1】統合失調症などを有し、薬物療法を必要とする群(49人)、【2】広汎性発達障害など、生活・就労支援が必要となる群(48人)、【3】パーソナリティ障害など、心理療法的支援が必要となる群(51人)という、3つに分類された。
 それらを踏まえ、ガイドラインではひきこもりの定義を「6カ月以上に渡って家庭にとどまり続けており、原則として非精神病性の現象とは一線を画すもの」としつつ、「実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くないことに留意すべき」と強調している。
 また、ひきこもり状態にある子どものいる世帯は、少なくとも全国でおよそ26万世帯であると推定している。
 ガイドラインでは、地域連携や、当事者への支援のありようについて、つぎのようにまとめている。
 地域の連携におけるひきこもり支援については、地域若者サポートステーションや精神保健福祉センターをはじめとして、教育、保健、福祉、医療など、複数の専門機関による多面的な支援の必要性を指摘している。
 NPOに関しては、居場所として活用し、ひきこもりを克服する当事者がいると述べる一方、支援機関の活動の質がまちまちであり不適切な対応をする団体も少なくないとして、行政機関から必要に応じて紹介してもらうほうがよいとしている。
 そのほか、当事者が相談場面に出向くことは困難な場合が多いため、アウトリーチ型支援(訪問支援)についても、タイミングを慎重に考慮したうえで実施することが重要だとしている。

◎ 不登校との 関連を強調

 今回のガイドラインの特徴は、ひきこもりを精神病と一線を画した現象としつつも、統合失調症や発達障害などの影響と、それに伴う薬物治療の必要性についても触れていることから、ひきこもりをメンタルヘルスの問題として捉えていることにある。
 また、不登校とひきこもりを強く関連づけている点も特徴的である。ガイドラインでは不登校について「社会的活動(学校生活や仲間との交友)とそれに関連した場(学校)からの回避行動であり、それはイコール社会活動からのひきこもりである」という視点を強調している。
 厚労省担当者は本紙取材に対し、「今回のガイドラインが専門機関で働く職員向けに配布されるほか、『思春期精神保健対策専門研修』など、ひきこもり支援にあたる専門家を育成する研修事業などもあわせてすすめていくなかで、ひきこもり当事者への支援を展開していきたい」としている。

◎臨床心理士 西村秀明さんのコメント

 なぜこの現代社会においてひきこもる青年が増加の一途をたどってきたのか、当報告書においては何の言及もない。原因のないところで“行動現象”は起こらないのである。ひきこもりとは何か、その核心の欠落により援助の視点もずれてしまった。
 何より、“学校や会社の対応に原因を見ようとする他罰的な家族”に迎合してはならないなど、はなから彼らの実態について聴く耳を持とうとしない姿勢には脱帽である。
 結局、本質など問わず、ただ一方的に事態を個人病理化して解説しているにすぎない。教育社会の構造的問題や日本社会の偏執的文化と大きく関わるこの不登校・ひきこもり現象に対し、この報告書を鵜呑みにすることによってさらなる偏見が蔓延しないことを祈るばかりである。