駅の改札を通るとき、ビンのふたを開けるとき、コンロで火を付けるとき、左利きだと、じつに不便だ。不便なばかりか「左利きは早死にする」などの風説もあり、調べれば調べるほど「なんとまあ、左利きに冷たい社会なのか」と痛感させられる。今回は、この左利きについて調べるとともに、1万人以上の手、目、足、耳などの左右の能力のちがいを研究した前原勝矢さんから「利き」についてお話をうかがった。

◎利きの誕生

「利き」は手だけでなく、目、足、耳にも「利き」が存在する。前原さんの話によると「150万年のホモサピエンスの歴史を見ても、文化、地域を問わず」、利き手が左の人は1割程度。石器の作り方、動物の遺骨の傷つき方を見ても、右利きが多かったと判断されている。

そもそも、この「利き」だが、「人間の脳が著しく発達したため『余力』が生じ、言語や高度な道具を使うようになったため」生まれたもので、多くは遺伝によって「利き」が決まると考えられている。しかし「利き」については、さまざまな説があり、有力説にも異論や未解決な点も多く残されている。ハッキリとは解明されていない問題なのだ。

また「利き手」も安定しているものではなく、実際は「生涯にわたり変化し続けるもの」。とくに10歳~25歳までは激しい変化を見せている。しかし、男性だと11歳~14歳ごろ、女性だと16歳~17歳ごろまでに、ある程度「利き手」が意識されるため、多くの人は利き手を決めつけてしまうそうだ。

つぎに手以外の「利き」。前原さんらの調査では「ボールを蹴る」「幅跳びの踏み切り」「小さいものをつまむ」、これらをどちらの足で多く行なうかで、利き足を判断した。結果は、日本人の右足利きは男性60%、女性70%と出ている。

さらに利き目。「ビンの中をのぞく」「手でつくったすき間から遠くを見る」のは、どちらの目か、という調査を行なったところ、日本人の利き目は右が多く、男性63%、女性57%という結果が残されている。

◎左利き用商品、あります

左利き手にまつわる風説は多い。本紙子ども若者編集部のPN月さん、金子三星さんも左利き手で「左利きはお嫁にいけない」「左手で食べるのは、はしたない」などと言われこともある。文字は右手で書くほうが便利につくられており、とくに習字練習では苦労させられている。PN月さんは、習字の教師から「左利きの人間はアカンって、人格まで否定された(笑)」と言う。また、料理器具もほとんどが右利き手用につくられている。「右利き用」につくられた社会のなかで「言うほど不便じゃない」が、コツコツとウップンがたまっているようだ。

さて、こんなレフティの方にご紹介したいのは、HP「クラブレフティー」などのサイト。左利きコミュニティの草分け的な存在であった「左利き友の会」が前身で、体験談が多く掲載されているほか、左利き手にまつわるコラムも掲載されている。さらに「左機器.COM」では左利き用の商品を通信販売している。とくに包丁・ハサミなどの刃物や料理器具などは充実のラインナップ。店のご主人は左利き手で、企画の趣旨を説明すると快くハサミとフライ返しをお貸しいただいた。

このフライ返し、通常(右利き用)のフライ返しとは左右が逆のつくりになっており、前出の二人も「ステキ!」とその使いやすさを喜んでいた。HPがあるので、興味のある方はどうぞ。(石井志昂)

※2006年2月1日 Fonte掲載