私が不登校になり、問題視される側になったことから、日本では「よい・悪い」と言われていることが、ほかの国でも同じように考えられているかを、知りたいと思っていました。
とくにオランダは、テレビなどで「大麻が認められている」とか「自由の国」と聞いたことがあります。そんなオランダでは、どんなふうに教育を行なっているのか? と思い、オランダの教育事情について調べてみました。今回はオランダに8年間在住し、オランダの教育史を研究されているリヒテルズ直子さんとシューレ大学の朝倉景樹さんに取材しました。(山本侑佳里)

調べてみて、驚いたのは、まず、オランダの教育が多様な点と学区制がないため幅広く学校が選べる、という点です。リヒテルズ直子さんは「オランダの学校が100あれば、100のちがう教育をやっている」と話してくれました。その言葉だけではピンときませんでしたが、調べてみると本当にさまざまな学校がありました。

たとえば、異なる年齢の子どもたちを一つのグループにして指導する学校、イスラム文化を中心にしている学校、近代的な建物で学ぶ学校などです。それぞれの学校が特徴を持ち、親や子どもに宣伝しているそうです。私立学校は、その親や子どもとあわない場合などは、入学を断ることもでき、入学後も「私にあわないな」と思えば、転校やちがう学年に移ることもよくあるそうです。

◎教育の自由

オランダの義務教育年齢は5歳から18歳まで。最後の2年間が部分的義務教育となっています。また「オランダの全土に存在する小中学校のうち、公立学校が3割前後。残り7割前後の子どもたちが、教育について何らかの主義や立場を明らかにした私立学校に通っている」そうで、私立、公立を問わず、ほとんど教育費がかかりません。

オランダは憲法23条によって「教育の自由」が保障されています。リヒテルズさんいわく「文部科学省は科目の種類や時間には、一定の基準を与えていますが、オランダでは教科書の内容が均一ではなく、各学校はみずからの価値観を独自に教える自由があります」。ですが、いくら独自にとは言っても、生徒の定員割れになれば廃校になってしまうので、学校も身勝手にはできないようです。

◎市民団体も学校がつくれる

「オランダでは、約200人の子どもが集まることを証明できれば、市民団体でも政府から援助を受けて学校を設立できる」と、朝倉さん、リヒテルズさんは話してくれました。そうしたこぢんまりした学校をふくめ、スーパーへ行くくらいの近所に3~4校もあると言うのだから、考えて選ばざるを得ないようです。もし遠くの学校を選んでも、交通費は援助されるので、金銭面で距離は関係ないようです。

◎不登校は?

オランダの不登校事情を朝倉さんにお聞きしたところ「オランダには日本の不登校にあたることはないし、日本ほど登校へのプレッシャーは強くない」と言われました。たとえば「しょっちゅう学校をさぼる」とか「今度、家族でアフリカに行くから学校を3週間休みます」なんてこともけっこうあるそうです。オランダでは、高校も大学も本人が希望すれば、落とされることもありません。朝倉さんは「学校がきらいな人も、なんとか学校を卒業しているのではないか」と話してくれました。

◎性とドラッグ

今回の取材では、麻薬教育と性教育に注目しました。それは日本と教育内容のちがいがわかりやすいと思ったからです。リヒテルズさんの話によると「オランダでは小学校の高学年と中学校でくわしく学びます。たとえばアルコールやタバコをふくむ合法・非合法すべての麻薬について、生産過程、効能、中毒のなりやすさ、健康への害、医療での利用法を教えます。性教育は、男女それぞれの生殖器の機能や性交、受胎、妊娠、避妊を男女共学の教室で教えます」とのことです。そうした前提をふまえ「個人の判断に任せる」のがオランダの基本姿勢なのだそうです。

◎ちがいの理由

最後に何がオランダと日本の差異を生んでいるのか? と質問したところ「オランダの教育史をみて、つくづく思わされるのは、彼ら自身が、国の制度は彼ら自身がつくっていくものだ、という意識を持っていることです。そういう意識が教育の中身を変えている」と話してくれました。

私はオランダの教育事情を調べるにあたって、ここまで日本とのちがいがあるとは思っていませんでしたので、オランダについて知れば知るほどビックリ仰天でした。日本とはちがうやり方もあることを、すこし知ることができて、おもしろかったし、よかったと思います。そして、私に、オランダの教育事情を教えてくださった方々、本当にありがとうございました。

※2005年3月1日 Fonte掲載