先日の同時多発テロには驚かされた。いったい誰が、ツインタワーに航空機が突っ込んでくるなどと予想しただろう。犠牲者の冥福を祈るばかりである。日本でも、各地でテロに対する厳戒態勢が敷かれている。だが、われわれの日常には、それ以外にもさまざまな危険が潜んでいる。突然の地震、火災、暴風雨……そしてそれは、ある程度の予備知識を持つことによって、被害を最小限にくい止めることが可能だ。

でかい飛行機に体当たりされたら、あきらめるほかないような気もするが、一般市民の力でも被害をくい止められるものに関しては、しっかり対処していきたい。ということで、東京都墨田区にある、『本所防災館』を見学し、災害の模擬体験をしてきた。

◎本所防災館

災害体験をする前に、まず驚かされてしまったのが建物の外観である。下町の風景からは多少浮いてしまうほど立派な施設なのだ。入口の自動ドアもやたらと重厚だし、案内されたエレベーターも大袈裟かつ立派だった。館内の壁や廊下からも無駄にハイテクな香りがし、近未来の地球防衛隊司令部にでも迷い込んだような気分だった。当然、無邪気にはしゃいでしまいそうになったが、本来の目的は災害を模擬的に体験し、適切な対処法を学ぶことである。気を引きしめねば。

まずは、東京が大地震に見舞われたという設定での映像を観ることになった。3Dシアターというもっともらしい名前の空間に案内され、ひと昔前のペテン師でもかけていないような、恥ずかしすぎる眼鏡を手渡される。この眼鏡をかけてスクリーンを見ると、立体映像が楽しめるという寸法だ。画面内で大地が震えると、座席も中途半端に振動するなどという粋な計らいもなされているが、映像そのものは、ふつうのデキである。

◎震度7の地震

続いて、煙体験コーナーへ。火災に見舞われた際には、煙が充満して視界が遮られた状態でも、非常灯を頼りにしてすみやかに避難せねばならない。人体には無害の煙を充満させてある部屋で、体を低く屈めて避難。しかし情けないことに道をまちがえ、あわてて引き返す始末。本当の火事だったら、一酸化炭素中毒になっていたかもしれない。

消火器の使い方も体験したあと、震災体験コーナーに向かった。揺れの強度や揺れている時間など、阪神大震災を忠実に再現したものを体験できるのだ。あの阪神淡路大震災(震度7)をリアルタイムで経験した僕にとっては、二度目の大震災ということになる。雰囲気を出すためか、防災頭巾を着用。本当に地震がきたら、こんなもの被っている余裕はないし、手元に頭巾があるという設定も不思議だ。

二度目の大震災は、拍子抜けするほどあっさり終わってしまった。さほど恐くない。「あの地震はあんなに短かったっけ?」「揺れってあの程度だったかな?」というのが正直な感想だ。抜き打ちで訪れたあの1月17日は、揺れているあいだも、地震だという認識すら持てず、何かが家に衝突したのだと思っていた。まさか、地球そのものが揺れているなんて考えは浮かばなかったのだ。

◎風速30mの暴風雨

最後は風速30mの暴風雨。ここでも変な雨合羽を着用することになるが、恥ずかしい格好をさせられるのにも、そろそろ慣れた。屋根瓦が飛ぶほどの強風、大粒の雨が顔を打つ。体験用の狭い部屋に10人くらいで閉じ込められ、みんな声もなく雨風に耐えていた。

体験をひととおり終えると、素敵なことに終了証まで発行してくれた。尋常ではない額の税金が投入されているであろうこの施設で、学べることは非常に多い。ただ、短時間にこれだけ被災した経験はないのでいささか疲れた。やっぱり、災害は起こらないのが一番である。(森安範)

※2001年12月15日 不登校新聞掲載