※巣鴨のお店(本文とは関係ありません)

3月から毎月1回、子どもチャット会議を開いている。全国各地から集まる参加者がチャットを通して会議を開き、雑談のような、編集会議のような話し合いをしている。今回は、「子どもチャット会議」から生まれた企画の第一弾。テーマは「大人って何だ?」。学校に行かないと、さまざまな質問をぶつけられる。「進学はしないの?」「やりたいことはないの?」などなど、聞かれてばかりの子ども編集部員が、おじいちゃん、おばあちゃんたちに、いつも聞かれている質問を投げかけてみよう、という企画だ。不登校の子に質問された言葉通りだと、失礼な面や食いちがう面もあるが、なるべく趣旨を変えずに取材をしてみた。

「おじいちゃん、おばあちゃんの原宿」と言えば東京・巣鴨。ちょうど取材の日は縁日。どらやき、漬け物、ももひきの大売り出しをする屋台を横目に、時間に追われた取材班一向は、ごった返すおばあちゃんたちにボンボンぶつかりながら先へ急ぐ。すると、見えてきたのは「区民ひろば清和」、ここにおじいちゃん、おばあちゃんたちの集いの場がある。今回、取材を受けてくださったのは、最年少が76歳で最年長が84歳までの6名。さっそく取材に取りかかった。

◎大人の条件は?

子どもチャット会議で、議論になったのが「大人ってなんだ?」ということ。将来の夢を聞かれたり、進路について聞かれたりするのも、ようするに「学校にも行かないで、どうやって大人になるつもりだ」という考えに基づいてのもの。しかし、そもそも、どうしたら、大人になれるのか疑問だ。この点から質問してみよう。

「いきなりですが、大人の条件ってなんですか?」

そう切り出すと「うーん……」と首をひねりながら、答えてくれた。

「善し悪しの判断が付くようになったら、大人じゃないかしら」(84歳・女性)、「一般常識があればねえ」(77歳・男性)。ほかにも「敬語の使える」「社会の先輩として責任を持つ」「熟語を知ってる」などの意見も出されたが、取材班の心に残ったのは、この一言。

「私、年だけ取って、まだ大人になりきれてないの(笑)」(77歳・女性)。

また、「大人になったと思う年齢」について聞くと、「40歳を過ぎて、ようやくいろんな人の意見がわかってきたから、それぐらいじゃないかしら」(80歳・女性)、という意見が出された。

◎役に立った? 学校の授業

次に気になるのが「学校」について。戦中と戦後ををまたぐかたちで学校教育を受けていた方もいる。「学校の勉強は役に立ったか?」と、質問をしてみた。

これは「役に立った」という人がほとんどで、「礼儀作法が身についた」「裁縫を覚えた」という意見や「だいたいは役に立ちましたよ、お勉強はしませんでしたから(笑)」(76歳・女性)という意見もあった。

じゃあ「役に立たなかったことは?」と切り返すと、「バケツリレーと竹やりの訓練は役に立たなかったわ」(82歳・女性)という話が出されると、場は多いに盛りあがった。

◎将来の夢は?

「将来の夢は?」、不登校の子はかならずこれを聞かれる。子どもチャット会議のなかでは、「はっきりとした将来像を持たないと負い目を感じる」などの意見が出されたのち、「将来という言葉の意味は『これから先の時間』、だから、おじいちゃんたちにも『将来の夢』を聞いていいんじゃないか」という結論にいたった。

そこで取材班は意を決して聞く「将来の夢はありますか?」。

「もう、将来はないわよ」「将来のその先に来ちゃったから」と一蹴。まあ、予想通りの結末。すこし質問を変えてみる「これから、やってみたいこと、また、今後、不安なことはありますか?」。これも不登校の子がよく聞かれる質問だ。

これに対しては、一人暮らしをしていることや健康面の不安について意見が出された。取材班が息をのんだのは「私は今日があって、明日があれば、それでいい」(77歳・男性)、という一言。説得力があった。

取材を中心的に進めてきた村主美佳さんは「いま一番楽しいことは?」と質問したとき、みなさんから「この場に集まって、おしゃべりをすること」という答えが返ってきたことが印象的だったようだ。「私もおばあちゃんたちも、集まって楽しいと思える居場所が一番大事なのは、いっしょだった」(村主)。

以前より、おじいちゃん、おばあちゃんに親しみが増した取材班一向は、帰りすがら「I LOVE 巣鴨」と書かれたTシャツを購入し、街を後にするのだった。(子ども編集部)

※2007年4月15日 Fonte掲載