映画でも、マンガでも、小説でも、「縁の下の力持ち」は持ち前の渋さでわれわれを魅了する。しかし、現実の「縁の下の力持ち」も人気があるかといえば、そうでもない。なんせ気づかれないからだ。今回、紹介するのは、おそらく存在は知っていても、名前までは知らないであろうもの。その名も「バッグ・クロージャー」。ほら、知らないでしょ。食パンの袋などを留めているプラスチック製のアレです。

◎クロージャーのあれこれ

日本でバッグ・クロージャーをつくっているのは、クイック・ロック・ジャパン。もともとアメリカで生まれたバッグ・クロージャーは、日本に渡り特許商品として出まわっている。取材に訪れたのはクイック・ロック・ジャパン大阪営業所。取材班がたどり着くと、さっそくパンフレットをもらった。おお、やはりいろんなクロージャーがあるもんだ。網ネットに対応するため、非常に穴の小さいN―0クロージャー、両面に穴のあるシリーズAクロージャー、さらには最大級の大きさを誇るZクロージャー。このZクロージャー、大きさも並のものとは2倍以上、厚さもがっしりしてる。あたくしはまだ感性が幼稚なもので、でかいZクロージャーを発見すると「一番えらいヤツだ」とほくそ笑んでいた。クロージャーは7色8種類もあり、パンだけでなく野菜などの包装にも使われるため、色もかたちもさまざまにある。

◎クロージャーの歴史をさぐる

さて、そんなバッグ・クロージャーの歴史をたどってみよう。

アメリカとカナダとの国境付近にある静かな町ワシントン州ヤキマ。リンゴやブドウの産地として有名なこの地でバッグ・クロージャーは静かに産声を上げた。開発者の名はヘイル・パクストン(現クイック・ロック社社長の祖父)。1955年クイック・ロック社が設立されて以来、野菜袋の留め具として人気を得る。その人気は海を越え、オーストラリア、アイルランド、日本にも進出し、クイック・ロック・グループが形成された。

日本に進出したのは1983年。諸外国とちがい、メイン活躍の場は野菜袋ではなくパンの袋だった。バッグ・クロージャーは取りつけ作業が簡単、金属探知器に引っかからず安全性の確保がしやすい、印字が可能など、機械化への対応に優れ、輪ゴムや針金といった「ライバル留め具」を出し抜いていった。いまでは1日約1億個(国内)が生産されている。明らかに大ヒット商品だ。バッグ・クロージャーの今後について、クイック・ロック・ジャパンの水上有一さんは「QRコードを記載するなど、ラベル化に力を入れてさらなるPR効果を高めていきたい」と話す。

うーん、なんだか愛着のわいてきたバッグ・クロージャー。今度、人のいないところで「よっ! バッグ・クロージャー」と声をかけ、これまでの労をねぎらってやってもいいかもしれない。(石井志昂)

※2005年9月15日 Fonte掲載