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 2004年10月に大阪で、はじめての子ども編集会議を行った。いろいろな提案が出るなか、スーパーマリオの曲には「歌詞がある」という話がすごく盛り上がったので、その歌詞やマリオの謎について調べるため、取材班は京都にある任天堂本社へむかった。

 はじめての取材で緊張しながら任天堂へ到達したのだが、ない。マリオやポケモンの気配がない。イメージでは、マリオの銅像などが笑顔でむかえてくれると思っていたが、現実は白く巨大な、とてもシンプルなビルがそびえ立つだけだ。どこかの副知事から「不良品」などと呼ばれた我われと売上高5000億の一流企業との壁を感じつつも、勇気を出して、任天堂の奥へと進む。取材にこたえてくれるのは、広報課の課長さん。しかし、なかなか来ない。もしかして「マリオの格好に着替えてるんじゃねえか?」などと話しているとノックの音が、ふつうの格好の広報の方の登場。挨拶するやいなや「いやぁ、人生何が起こるかわからないねぇ、マリオの歌の入ったテープをダビングしようとしたら、詰まって取り出せなくなった」とのこと。大きな目的の1つを失いつつも、気を取り直して質問をぶつけていった。

 まずは任天堂の実績から。任天堂が発売したゲーム機の販売台数は国内外で3億3150万台。ゲームソフトは19億2150万本。正統派マリオシリーズ(マリオが冒険する話)の売り上げは1億7515万本。世界市場のシェアは米国50%、日本、ヨーロッパ、オーストラリアで残りの50%を占めている。しかし、ゲームボーなどは世界中に流通しているため、完全には把握されていない。そのため、担当者は「世界のどこに行っても任天堂のゲームはある」と言う。

◎プロフィール

 さて、マリオのプロフィール。本名は「マリオ」、名字はない。由来はある倉庫の大家マリオ・セガール(イタリア系アメリカ人)さんに檄似だったため、命名された。名前がなかったころは、あらゆるゲームに登場させようとしていたため「ミスタービデオゲーム」「ジャンプマン」などと、制作者たちは呼んでいた。年齢は担当者いわく「永遠の中年です」とのこと。身長、体重の設定はなし。職業「大工、配管工」性格「正義感が強くて、三枚目」マリオは任天堂ソフトの82タイトルに出演している「任天堂の最高のアクター(俳優)だ」とのこと。

◎マリオの謎

 ここからがマリオの謎(あげ足とり?)についての質問。

謎1「なぜマリオは大工なのに、ピーチ姫を助けに行くのか?」

回答「マリオの性格は、正義感が強い三枚目ということです」

マリオがやらねば誰がやる、ということなのか?

謎2「マリオは自宅の城をワリオに奪われたことがあります。大工の城住まいは変なのでは?」

回答「これは内部事情ですが、マリオをつくるチームとワリオをつくるチームがちがい、ズレが生まれてしまった。だから、マリオチームは『マリオは城を持ってない』と主張しています」

ゲームの外でもマリオとワリオは対立?

謎3「なぜキノコを食べると大きくなるの?」

回答「制作中にパグ(異常)が起き、急にマリオがちっちゃくなった。『おもしろいな』と思った制作者が『不思議の国のアリス』のマジックマッシュルームにヒントを得て考案したそうです」

謎4「キノコ王国はキノコたちが住人です。そのキノコを食べるというのは、いかがなものか?」

回答「マリオブラザーズでは、ひとつのキノコのかたちを使いまわし、アイテムやキャラクターを生み出しています。それはファミコンの能力が低く、メモリーを食わせないためのアイディアでした。以上のことからキノコやカメが多いのです」

◎結論としては

 そのほか、細かいところをつっつきながら興味深い話を聞いていると「任天堂は『こんなことができたらおもしろい』というアイディアを考えて、それをゲームに組みこむわけなので、キャラクター設定や物語などは、最後に無理やり考えているんです。だから、細かいところはつっこまないでください」と言われ、質問しづらくなってしまった。そりゃ、そうであろう、そうじゃないと世界のマリオは、ただの無謀なオッサンということになってしまう。質問しづらい状況でいると、広報さんの話もしだいに人生の先輩としての話に変わってしまい「人生何が起こるかわからない、出会いは大切だ」と諭された。そうこうしてると帰る時間がきた。

 そして私は「任天堂はでっかいどう」というしょうもないダジャレが頭の中をグルグルまわるのを止められないまま、帰路につくのであった。(小池智央)

※2004年12月1日 Fonte掲載