Vol.08 「17歳」
チャンスやピンチに会ったら伝えてほしい、もう少しわかりやすいかたちで来てもらいたかったと。
友人からベンチャーズのコピーバンドをやらないかという話を持ちかけられて迷ったのは15歳のときだった。音楽は好きだしモテるきっかけにもなるような気はしたが、いかんせん外見に問題があった。
ほかのメンバーは細身でヘアスタイルも七・三に分けて整髪料で固めた当時流行のアイビーなのだが、私はずんぐりむっくりの体形で職人刈りであった。エレキギターが似合うわけがない。それでも誘惑には勝てず、OKしてしまった。
運動会のアトラクションに始まり、やがて方々のダンスパーティーから声がかかるようになり、さらには米軍キャンプのクラブで演奏したりして、それはそれでいい思い出になった3年半だった。やってみるものである。
しかし、モテない状態からの脱出は果たせなかった。一番モテないやつがモテる努力をしないのだから当然といえば当然である。馬鹿野郎である。
パーティーの休憩時間でもほかのメンバーが女の子相手に踊ったりナンパに興じているのを横目にして一人浮いていた。ほかのメンバーからすればウザイ存在だったろうと思う。
そんなある日、メンバーの部屋で飲み会となり、メンバーと女の子、総勢10人たらずがこたつで雑魚寝になったことがあった。
朝、ふと気がついてみるとなんと部屋にいるのは私と一人の女の子だけだった。ここから私の苦しみが始まる。
「これは、チャンスというやつかな。この子は状況がわかっているのだろうか。下手に手を出して騒がれてもなあ。いや、期待されてるかも。でも俺まだ未経験だし、自信もねえしなあ。勢いでいくとこまでいって妊娠というのも困るし、性病とかのこともあるし。この子に特別な感情はもってないし。女ぎらいとか言ってる奴がこんな場合どうするかを試してやれなんていう罠かもしれないし、もしそうならチャンスどころの話じゃないよな。やめとくか。けど、こんな機会は最初で最後かもしれないし……」と堂々めぐりのパニックが1時間ほども続いた。
また、結論が出るまでその子に目を醒まされてもという思いで体も動かせず、疲れきってしまって部屋を出た。
家への道すがら、考えるというのも、考え考えしないと考えもんだなと考えながら歩いていた。
その後、その子は寄りつかなくなり、同じような機会も二度となかった。たとえあっても同じことの繰り返しになりそうな気もしていた。
青春というのは面倒なものである。

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