高岡健「社会の中の精神現象」
- ■ 第1回「社会の中の精神現象」 高岡健
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2007年1月、東京都渋谷区の歯科医宅で、浪人生による妹殺害事件が起こった。短大生で芸能事務所にも所属し、その後はグラビアアイドルを目指していた妹から、「歯科医になるのは人のまねだ」「夢がないね」と言われたことが引き金だったという。殺害後に兄は、遺体を切断しながら、他方で予備校の合宿に参加していた。
- ■ 第2回「社会の中の精神現象」 高岡健
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渋谷遺体切断事件の両親の手記が、新聞紙上に掲載されていた。「(妹の)他を顧みない自由奔放な性格と言動は、家族から理解されていなかった」、「(兄は)妹が両親を悩ます元凶と思いこむようになったのではないか」、「(妹が兄に)謝ってさえいてくれれば……このような凶行にいたらずに、すんだのではないか」という内容だ。
- ■ 第3回「社会の中の精神現象」 高岡健
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インフルエンザ治療薬タミフルと、異常行動との関係についての議論が続いている。報道に基づいて、経緯を整理してみよう。
2004年に、タミフル服用後の幻覚や異常行動が複数報告されたが、他方では新型インフルエンザ対策のために国家備蓄が決定された。翌年には、少年2人の死亡などが学会で報告されるとともに、米国食品医薬品局によって日本の12人の死亡例が、公表された。ただし、因果関係については「否定的」とされていた。
- ■ 第4回「社会の中の精神現象」 高岡健
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タミフル問題が錯綜したのは、厚労省研究班が異常行動との因果関係を、統計を用いて否定したからだった。タミフルを服用したインフルエンザ患者と、服用していない患者を比較しても、数の上ではあまり差がみられなかったことが、否定の根拠とされていた。
- ■ 第5回「社会の中の精神現象」 高岡健
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2007年4月16日、バージニア工科大学で銃乱射事件が起こり、32人が死亡した。その場で自殺した容疑者は、韓国人で同大4年のチョ・スンフィと特定されている。
バージニア工大事件、1999年のコロンバイン高校銃乱射事件を重ねる見方がある。チョ容疑者がテレビ局へ送りつけた文書に、コロンバイン高校事件の容疑者とされる、2人の名前が記されていたからだ。チョ容疑者は、コロンバイン高校事件のどこに、共鳴したのだろうか。
- ■ 第6回「社会の中の精神現象」 高岡健
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バージニア工大乱射事件のチョ容疑者は、8歳ごろに一家で韓国から渡米したと報道されている。このあたりの年齢で海外移住した人を、1世と2世の中間という意味で、1・5世と呼ぶらしい。
- ■ 第7回「社会の中の精神現象」 高岡健
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2007年6月20日に、臓器移植法改正案が審議入りし、衆院厚労委に小委員会が設置された。次期国会で成立させる狙いがあるという。改正案として提出されているのは、次の二つだ。第一に、脳死者が生存中に拒否の意思を示していないかぎり、遺族の承諾により臓器を摘出できるようにする中山太郎(自民)案。第二に、臓器提供の意思表示ができる年齢を15歳から12歳へと引き下げる斉藤鉄夫(公明)案。
- ■ 第8回「社会の中の精神現象」 高岡健
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2つの臓器移植法改正案のうちの斉藤案は、脳死下での臓器移植を、子どもへと拡大しようとするものだ。しかし、子どもを脳死と診断するための基準に対しては、根底的な疑義が提出されている。2005年の日本児童青年精神医学会で、小児科医の杉本健郎氏は、脳死の診断基準を満たした小児例でも身長が伸びるといった理由を挙げ、診断基準は「広汎かつ重篤な脳の壊死を正確に予測」していないと指摘していた。平たく言えば、脳は生きているのに、診断基準によれば死んだと判定されてしまうということだ。
- ■ 第9回「社会の中の精神現象」 高岡健
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2007年6月1日に、教育再生会議の第二次報告が公表された。この会議を構成する「有識者」の名前を見るにつけ、嫌な顔ぶれだという感想を禁じえない。財界人のほかは、学問が好きなのか名誉が好きなのか分からないような学者や、みずからの狭い経験を嬉々と語ることしかできないメンバーで、固められているからだ。
- ■ 第10回「社会の中の精神現象」 高岡健
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教育再生会議第二次報告(下)
教育再生会議の第二次報告は、「学力向上」「徳育」「大学・大学院再生」の3つの部分から構成されている。
まず、学力向上の方針は、「ゆとり教育」が学力を低下させたという、根拠のない認識に基づいて提起されている。なぜ根拠がないかは、次のような例を見るだけでもあきらかだ。現在の安倍内閣には、国語力が不足している大臣が、少なくとも2人いる。一人は柳沢伯夫厚労相で、国会答弁でみずからそれを認めた。もう一人は、ほかならぬ安倍晋三首相で、加藤紘一議員からそう指摘された(もっとも、安倍首相はのちに、菅直人議員に対し同じ指摘を投げかけた)。彼らはいずれも、ゆとり教育で育った世代ではない。
- ■ 第11回「社会の中の精神現象」 高岡健
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光市母子殺害裁判(上)
光市母子殺害事件の公判が、大詰めを迎えている。まず、この事件の経緯を整理しておくなら、次の通りだ。
「元少年」と報道されることの多いAは、1981年に山口県光市で生まれた。Aが中学生のころ、父親から暴力をふるわれ続けた母親は自殺し、その後、父親はフィリピン人女性と再婚した。高校を卒業したAは、水道設備会社に就職した直後の1999年4月14日に、同じ団地に住む主婦と赤ん坊を殺害した。逮捕された当時18歳のAは、一審と二審で無期懲役の判決を受けた。しかし、2006年6月に最高裁が二審判決を破棄し、審理を差し戻す判決を下したため、現在は広島高裁で公判が継続されている。
- ■ 第12回「社会の中の精神現象」 高岡健
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光市母子殺害裁判(下)
遺族である本村洋氏の話の中から、私の記憶に残っている部分を、もう一つ書き留めておこう。本村氏は、ある米国の犯罪加害者が死刑と直面して、はじめて真に謝罪することができたようすを語っていた。だから、死刑は贖罪の心をもたらすのだという。記者会見でも同じく「被告人に死刑判決が下り、反省し慟哭することを願っている」と述べていた。
- ■ 第13回「社会の中の精神現象」 高岡健
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少年調書漏示出版(上)
奈良県の医師宅放火殺害事件を題材にした書籍の著者に、供述調書を提供したとされる精神科医宅が、秘密漏示容疑で捜索を受けたと報道されている。
奈良放火殺害事件とは、2006年6月に、進学高校に通う当時16歳の少年が、自宅に放火して継母と義弟義妹の三人が死亡した事件を指している。また、書籍とは、草薙厚子氏が執筆した『僕はパパを殺すことに決めた』である。
- ■ 第14回「社会の中の精神現象」 高岡健
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少年調書漏示出版(下)
奈良医師宅放火殺害事件の精神鑑定を行なった医師は、調書に関しての秘密漏示容疑を否認しているという。だから、現時点では、この医師が調書の写しや鑑定書を提供したと、断定することは慎まねばねらない。それでも、A4版3000枚の調書類を入手したと、著者である草薙氏が明言している以上、誰かがそれらを漏示したことは確かだ。
- ■ 第15回「社会の中の精神現象」 高岡健
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神戸市いじめ自殺(上)
神戸市須磨区の私立高校における、男子生徒の飛び降り自殺事件が、注目を集めている。
生徒のポケットに入っていたA4判3枚のメモには、「罰ゲームで金がたまる一方、もう払えん」「下半身の写真をインターネットサイトに掲載された」などと、記されていたという。この件では、少なくとも3人の少年がいじめに関与したとされ、恐喝未遂容疑で逮捕されている。
- ■ 第16回「社会の中の精神現象」 高岡健
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神戸市いじめ自殺(下)
神戸市いじめ自殺事件の被害者と荷担者は、外部からは見えにくい小集団を組んでいた。そして、個人が小集団の犠牲となっていった。しかし、学校の中で、個人が集団に隷属することによる悲劇は、彼らが開始したものではない。
- ■ 第17回「社会の中の精神現象」 高岡健
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寝屋川教師刺殺事件(上)
2005年のバレンタインデーに、大阪府寝屋川市の小学校で、教諭ら3人が包丁で刺され、うち1人が死亡する事件が起こった。刺したのは、この小学校を卒業した、当時17歳の少年だった。私の覚えにまちがいがなければ、少年は、小学校と中学校でいじめの被害にあい、不登校の期間が長かったと報道されていた。また、中学を卒業後まもなく大検に合格していて、彼に勉強を教えたのは姉だったはずだ。
- ■ 第18回「社会の中の精神現象」 高岡健
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寝屋川教師刺殺事件(下)
寝屋川事件では、簡易鑑定を別にすると、検察庁の段階と一審の段階で、計二度にわたる精神鑑定が行なわれている。おそらく、最初の鑑定に、誰かが不満を抱いたからだろう。いずれにしても、二つの鑑定は、いずれも少年が広汎性発達障害を有しているという点で、一致していた。
- ■ 第19回「社会の中の精神現象」 高岡健
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2007年をふり返って(上)
07年が去り、08年を迎えた。過ぎ去った年を回顧して、年末の各新聞は、恒例の重大ニュース特集を行なっていた。そのうちのいくつかを取り上げてみよう。本連載の最後にあたって、私なりの社会への基本的視座を示してみたいからだ。
- ■ 最終回「社会の中の精神現象」 高岡健
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2007年をふり返って(下)
「防衛省守屋前次官を逮捕/山田洋行からゴルフ接待」というニュースもあった。この事件の発覚直後に、すべての防衛省幹部にGPS(全地球測位システム)を持たせることを、現防衛大臣が指示した。非常事態に際し、ゴルフ場で遊んでいる幹部を招集できないようでは困るというのが、表向きの理由だ。


